2006年5月31日水曜日

青井夏海 「赤ちゃんがいっぱい」(創元推理文庫)

前作「赤ちゃんをさがせ」で、ワトソン役の聡子さん、陽奈ちゃん、ホームズ役の「伝説のカリスマ助産婦」明楽先生の最強の助産婦シリーズの2作目で、今回は長編。


ところが、聡子さんは、元ダンの宝田さんとヨリを戻して、2番目の子供ができた為に、育児休業中である。大事な収入源と栄養調達源が休業中に、なんと陽奈ちゃんは。アルバイト先の助産院をリストラされてしまうのである。

さあ、困った。公立病院の採用試験は終わっているし、民間の病院はどこも出産の数自体が減っているから、採用はほとんどない。もう実家にも頼れないしー、ということで、陽奈ちゃんが、聡子さんの紹介で再就職したのが。「ハローベイビー研究所」という似う研究所の妊産婦さんのカウンセリングをやるといった仕事である。


ところが、この研究所、結構怪しげ。

昔(研究所創設当時だ)胎内教育で、天才をつくり出したが、天才をつくるより子供は元気が一番だ、といったことを売り文句にする、研究所に通えば「天才」ができるかもしれませんよー、でも、できなかっても、子供は愛情込めて育てるのが一番よねー、といった抜け道をつくっていながら、信者を集めるやり口。
おまけに、その天才児が、成長してスーパーバイザーを勤めているのである。

まあ、怪しげで。事件が起きないと、ミステリーってものは成立しないのだが、この研究所の研究に利用されたと訴える妊産婦さんの出現とか、研究所の前に赤ちゃんがおきざりにされるとかの事件が発生する。



で、こうした事件の過程で、元天才児が、この研究所の乗っ取り(本人の弁では、元の所有者の返してもらうのだそうだが)を企んでいたり、この研究所の所長や提携の産婦人科医院も、このおきざりの赤ちゃんをなかなか警察に届けようとしないといったことが並行して重なって・・・。研究所と産婦人科医院の秘密が、それもふたつの存続すら脅かす秘密が明らかになっていくのである。

感想からいえば、そうした秘密が、今まで20数年もばれないって、ちょっとないんじゃないのー、という思いはあるが、何か軽快に秘密が暴かれて、悪事を働いていた奴らが、ふんづかまってしまうので、そうした爽快感で許すとしよう。


最期は、研究所と産婦人科医院がつぶれたおかげで、育児休業中の聡子さんも、突然、大量の自宅出産を受けおわないといけなくなるし、そうなると当然、陽奈ちゃんも手伝いに忙しくなるし、生活費のほうも当分は大丈夫だね、と陽奈ちゃんにVサインを送りたくなる結末である。


でも、このシリーズ、ここで終わりかなー、もう少し出ても良いよね、と思う、ほんわかミステリーである。

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