2014年9月27日土曜日

南場智子「不格好経営 チームDeNAの挑戦」(日本経済新聞出版社)

元DeNAの社長で、現在は取締役の南場智子氏のDenaの創業からの回顧録。


企業の浮沈、経営の毀誉褒貶は浮き世の常なので、善悪、良し悪しの評価ではなく、変化の激しいITベンチャーが立ち上がり、有力企業へと一気に育っていくに関わった経営者の「記録」として読んでおく。

こうした新興の企業の創業者の話は、時間単位で企業の様子が変化していっているので、その経営にまつわる話もスピード感あふれているとともに、短期間の企業成長なので、それぞれに独特の味(当然、その中には灰汁も含まれているのだが)を持っていて、自分の人生にどこまで使えるかは別として、効果の強いカンフル剤のような心地をうけるもではある。


とりわけ、彼女のようにコンサルタントではあったものの経営の素人から会社をつくり、業務開始前にシステムの「コードが一行もかかれていない」といった終末的なトラブルに見舞われるも、なんとかクリア。しかし、その後もYahooなどの大手との競り合いのすえのモバオクの成功、モバゲーの成功、そしてそれと並行するシステムトラブルの解決や、会社がぐんぐんと成長していく様を、どんどん流れていく動画のように読ませるのが本書といっていい。

構成は


第1章 立ち上げ
第2章 生い立ち
第3章 金策
第4章 モバイルシフト
第5章 ソーシャルゲーム
第6章 退任
第7章 人と組織
第8章 これから

となっているが、マッキンゼー時代やDeNAの会社立ち上げや成長物語は第6章まで。この辺りは現物にあたって、そのスピード感を味わって欲しい。

ビジネス書的に、おっと思われたところは

P91
なんの寄る辺なく起業する人は、有名な大企業のサポートをとても心強く感じてしまいがちだ。けれども、大企業を大株主にぬか得る場合、状況は変わりうる、という当然のことを頭に入れておく必要がある。・・・あちらも変われば、こちらも変わる。支援の内容や有用性、株の保有意向など、不変なものなど、ひとつもないのである。

P198
この意思決定については、緊急でもない事案も含め、「継続討議」にしないとおいうことが極めて重要だ。コンサルタントから経営者になり、一番苦労した点でもあった。
継続検討はとても甘くてらくちんな逃げ場である。決定には勇気もいり、迷うことも多い。もっと情報を集めて決めよう、とやてしまいたくなる。けれども仮に1週間後に情報が集まっても、結局また迷うのである。・・・こうしたことが、動きの速いこの業界では致命的になることも多い。だから「決定的な重要情報」が欠落していない場合は、迷ってもその場で決める。

P200
自分の仕事にオーナーシップを持っているメンバーは、必要な仕事を進めるために使えるものは有効に使うもので、そこに社長が含まれている場合も多い。

P204
決定したプランを実行チーム全員に話すときは、これしかない、いける、という信念を前面に出したほうがよい。本当は迷いだらけだし、そしてとても怖い。でもそれを見せないほうが成功確率は格段に上がる。事業を実行に移した初日から、企画段階ではよ予測できなかった大小さまざまな何台が次々と襲ってくる。その壁を毎日ぶち破っていかなければならない。迷いのないチームは迷いのあるチームよりも突破力がはるかに強い。

P214
人は、人によって育てられるのではなく、仕事で育つ。しかも成功体験でジャンプする。それも簡単な成功ではなく、失敗を重ね、のたうちまわって七転八倒したあげくの成功なら大きなジャンプとなる。
人の成長は、グラフで表せるものではないが、もしあえてグラフにするならコンスタントな右肩上がりのカーブを描くことは珍しく、多くは階段型だ。しばらく何も身動きできない苦しい時期がある。ところがそれを乗り越え小さくても成功したときはグンと階段を上がるようにジャンプする。

最後に、文筆業に専念するためにDeNAを退職する社員のメッセージが、この会社の→のようなまっすぐさを、ひとまずは表現していると思うので、引用して〆とする。

P229
7年前、DeNAに就職することが決まったことを告げた時も(退職して文筆業に専念すると伝えた時のように)彼らは同じように言っていました。
「お前、大丈夫か?」「将来をちゃんと考えているか?」と。
"選択"に正しいも誤りもなく、選択を正しかったものにする行動があるかどうかだけだと信じています。
この考え方は、DeNAで学んだ多くのことのうちの一つです

2014年9月21日日曜日

iOS8とiPhone6にかこつけてWifiルーターを買い替えた

息子のiPhone4をiPhone6に機種変更することして、本日がその到着日。
 
で、データの移行をさせるべきiTunesのアップデートやら、私のiPhone5やiPadやらのアプリのアップデートをしようとするのだが、やけに遅い。App storeがやけに混みあっているような印象。
 
もともとWifi環境もCoregaの古い無線ルーターなので、パフォーマンスも悪いのだが、これ幸いと無線ルーターの新調を奥さんに提案したところ、息子がウームと唸っているせいもあるのか、あっさりOKされた。
 
で、注文したのはこれ。今までと違ってアンテナが内蔵されているのは、少し気になるがざっくりと見た限りで評判の良いのをチョイスした。
 
本当は、奥さんの許しがあったので、フラッグシップであるBUFFALO 11ac(Draft) 1300プラス450Mbps 無線LAN親機 WZR-1750DHP2/N [フラストレーションフリーパッケージ(FFP)]
を注文しようかと思ったのだが、amazonの評価の悪いこと、悪いこと。どうもBuffaloはフラッグシップで失敗する傾向がある。玄人志向など裏バージョンでは、エッジの立ったものを出すし、エントリーモデルではコストパフォーマンスの良いものを出すのになぜかな?
 
まあ、今回のApp storeの混雑は、iOSの発表、iPhone6が発表されて最初の土・日曜日だからアクセスも最高潮だったからだろうが、まあ、これを口実にルーターが更新できたのは、漁父の利、というもかもしれないですな。
 

2014年9月20日土曜日

自然保護とスポーツツーリズム

今、自然保護関係の仕事にも関わっているのだが、そこでイベント、とりわけスポーツ・ツーリズムのようなものを仕掛けることが多く、自然保護とどう関係するんだ、と効かれることもあるので、釈明を兼ねて、自然保護とスポーツツーリズムについての所見を少し。

自然保護と相性の良いのは、エコツアー、ネイチャー・ツーリズムであるのは当然なのだが、そこに焦点をあてているだけでは自然保護への理解を示す層が狭くならないか、ということが懸念としてある。特にネイチャー・ツーリズムは、「保護」という観念が強く示されることが多いので、限られた人数にしか提供できないのでは、という思いが強い。

もちろん、貴重な自然の遺されたところは、そこができるだけ荒らさないようにする、というのが最優先になることはもちろんだが、そうでないところは、できるだけ広い層に提供する仕掛けをつくって、そこの自然に触れ合ってもらう、興味をもってもらうことが、そこの自然を守らないとね、というきっかけ、動機づけになるのではないか、と思うのである。

人間誰しも、自分と遠い存在への愛着は薄くなるのが通例だから、体験面、意識面で近い存在としていくことが、天然記念物ではなく身近な自然を守っていく、育てていくことにつながるのではないか、というのが自然豊かなところでイベントをしかけるべきでは、という主張の一つの柱。

そして、なぜ、スポーツか、というと凄く高尚な理屈はなくて、会うポーツやる人ってのは、もともとアウトドア好きだから、「自然の中」っていうのにも親和性が高いから、いわゆるインドア系の読書家やゲーム好きにターゲットを絞るより、「自然派」になってくれる可能性も高いのでは、というぐらいのことである。

まあ、こうした「自然保護」といった分野、ともするとカルト的になってしまうような気がするので、できるだけ、いかに「庶民的」にやるのが肝要かな、と思う次第である。

ジビエと鳥獣捕獲

過疎地域に属する町の町長さんと機会あって、ちょっと雑談した。

その町では、過疎地域の町村の常として、イノシシ、シカ、クマが人家近くまで出没して、様々な対策をとるのだが、なかなか思うようには・・・。駆除した獣肉は、ハムやソーセージに加工して販売もしているのだが、特産として大々的に売り出すには、有害駆除のものであるので捕獲量も安定しないという課題もあって、というお話であった。

「ジビエはヨーロッパでは貴族の食べ物で」などと大上段に振りかぶる話でなく、その時思ったのは、今、鳥獣保護法が改正されて、来年5月の施行を待っているのだが、その中の「鳥獣捕獲事業者」の制度(「鳥獣保護法」から「鳥獣保護管理法」へ ~増えすぎたシカやイノシシとの共生のために~)がうまく使えないかな、ということ。

もともと、この法改正は、最近被害がひどい鳥獣害に対処するため、一部の鳥獣について「保護」→「管理」という環境省にしては画期的な思想転換を図った法改正だと思っているのだが、この事業者を過疎地の自治体が育成あるいは専属でつくって一定の地域の鳥獣の「捕獲の請負」と「捕獲した獣肉の加工」、もう一つ加えると「販売」まで一括してやれるようなシステムができないかな、ということである。

 
民活に任すという手もあるのだが、ビジネスになる「鳥獣」が量とれるところなぞは限定されるし、捕獲も加工も資格や設備がいるから、本当に鳥獣害に悩んでいる過疎町村で「民間」が手を伸ばしてくれるかははなはだ疑わしいの思うのである。それならば、どのみち有害鳥獣の駆除が必須なら、「公的マタギ」をつくって、地域振興のネタもつくりながら駆除もできる仕掛けをkんが得手もいいのでは、と思う。
 
コスパがどうかね、といった議論もあろうが、もともとほっといておいても増える鳥獣被害である、輸入穀物に頼っている「肉」の自給率を高める方策としていろんところでやってみてはどうかな、と妄想しているのである。
 

2014年9月19日金曜日

NHKプレミアム おそろし 三島屋変調百物語

宮部みゆきの時代劇人情ホラー「おそろし 三島屋変調百物語事始め」のテレビドラマ化。
都合5回の放映の3回目で、あと2回あるから感想めいたものはそれからでもよいのだが、原作と同じ章立ての5回であり、NHKのこと、そうは外れていかないだろうと思うので、このあたりで。ひとまず個人的に勝手に総括。

波瑠の主人公おちか役は、はまり役といってもいい。許嫁を目の前で殺された痛手を抱えた若い娘の様子が、あの大きな目とどうかするとぽぉとした感じが抜けない感じとでなんともアンバランスな様子が漂うのが、役どころの「おちか」の立場の不安定さと不安を象徴しているようでなかなかよい。

それにもまして、「曼珠沙華」、「凶宅」、「邪恋」と続いた3回までの秀逸は、なんといっても「凶宅」の小島聖。あまり他の番組で見ないのだが、今回の役は、ちょっと狂的なところが、なんともあの薄い顔立ちとマッチして不気味さを醸し出していた。声がなんともか細いのと、演技なのだろうが、貼り付いたような笑顔が、まあ、なんとも美人なのだが儚いような怖いような,、恐ろしいような・・。

今後の放映は「魔鏡」、「家鳴り 」と続いて、最終話では「安藤坂の御屋敷」との対決もあろうから、ひょっとすると再びの出演となるかもしれないので楽しみにしておこうかしら

2014年9月14日日曜日

下川裕治「週末台湾でちょっと一息」

「週末バンコクでちょっと脱力」に続く週末シリーズの書き下ろし。
もともと下川氏のシリーズにはタイ・バンコクもの、飛行機・鉄道ものに加えて、沖縄ものがあるのだが、台湾の旅行記は、どちらかというとその「沖縄もの」の一環であったように思う。
今回は、最近ちょっと手あかがついてきた感がある「沖縄」から少し独立して「台湾」を正面からとらえたものとしては興味深い一作。

構成は

第一章 空港バスが淡水河を越えるときー日本からの飛行機
第二章 台湾式連れ込み安宿に流れ着いたーハンバーガー屋のメニューに入り込んだ蚤餅
第三章 ご飯とスープを勝手によそって、台湾に来たな・・・と思うービールを勝手に冷蔵庫からとり出す店の値頃感
第四章 自転車で淡水往復 五十キロの表道と裏道ー北海岸をバスで走り、テレサ・テンの墓へ
第五章 夜市の蟻地獄テーブルに座って、赤肉食加里飯を逃すー下に刷り込まれてしまった日本食
第六章 濃密な自然のエネルギーを腕の痒みで知らされるー漢民族のなかの軋轢
第七章 独立派の根城のビールが教えてくれる"政治の時代"ー台湾省
第八章 北回帰線から鹿港へ。清の時代の街並みのなかで悩むー各駅停車で台湾一周を試みたが
第九章 台湾在住者が提案する週末台湾

で、「週末バンコク」と同様、数日間の短期旅行としてのしつらえは同じである。

ただ、バンコクと違って、(最近の領土問題を巡る事象は出てこないまでも)中国との台湾の微妙な立ち位置や第二次世界大戦時の日本軍統治の時代の複雑な案件は垣間見えて、親日的な感じにほっとしつつも、手放しで"南国最髙"といったノーテンキな状態にはならないのはしょうがないところ。

さりとて、下町の食堂の風情や料理、夜市のメニューで昔風のカレーライスがあることやタクシー運転手の気の優しさなど、他の国とは違う台湾ならではの「なごみ感」を行間に感じるところが、当地の嬉しいところではある。さらに、挿入されている写真を見ても、繁体字といえ「漢字」があるのは、やはり漢字文化圏の日本人としては安心感を紡ぎだす作用があるのは致し方ない。
観光案内、現地案内として読もうとすると期待はずれになるが、異国の、しかも日本に近しい国の現地の佇まいを楽しむには良い本である。