2013年2月24日日曜日

松尾由美 「安楽椅子探偵 アーチー」(創元推理文庫)

アームチェア・ディクティティブといえば、現場に行くことなく、助手役の人物がもってくる現場の様子や状況をもとに推理を働かせて犯人を当てる役どころだが、これを文字通り「安楽椅子」がやってのける仕立てにしたのが本書の憎いところ。

収録は
首なし宇宙人の謎
クリスマスの靴の謎
外人墓地幽霊事件
緑のひじ掛け椅子の謎
の4編

最初の「首なし宇宙人の謎」で、本編の主人公である安楽椅子と助手役である及川衛がいかにして出会ったかが語られるのだが、出会いとしては小学生の衛がゲーム機を買うためにもらっていたお金で、つい(つい、ですよ)安楽椅子を買ってしまう、しかもなにやら昼寝をしているらしい安楽椅子を、といったあたりは結構無茶で乱暴な出だたしなのだが、、意識のある椅子という設定を考えるとこれぐらいは許されるか・・

ざっくりと収録された作品をレビューすると、はじめの3編は、衛の学校行事(家庭科の時間のナップザックのいたずらや横浜の外人墓地での課外授業に出会った暗号もの)か家族の椿事(クリスマスに父親が他人の靴を片方手にいれる)を発端とする事件で、なんとなくほぁっとした展開なのが、本書の持ち味。
最後の「緑のひじ掛け椅子の謎」は、この肘掛け椅子アーチーの以前の持ち主の過去にまつわる事件で、衛が誘拐されそうになったり、「間諜」などといった大時代の道具立ての事件がおこるのだが、それでも緊迫しているようで緊迫していないのも特徴。

キャストは、意識のある安楽椅子と、持ち主の小学生の男の子とその友人の女の子なのだが、受ける印象は、老人と孫の推理ものといった風情。ただ、老人と孫といったキャストでは、ぱっとしないというか興味を引かないところを、上海でつくられた、海を渡ってきた椅子と小学生といったキャストを使って、その味わいを出したのが、本書の手柄だろう。

総じてギスギスとしていないミステリーなので、仕事で追い立てられているときに、少し気を抜いてリラックスしたいときに、効能があるような気がする。

2013年2月23日土曜日

ガラパゴス化は今に始まったことではない

itProの「PCでも危惧されるガラパゴス化」を読んで思ったこと
 
ガラパゴス化ってのは、今に始まったことではなくて、江戸幕府の鎖国もそうだし、平安時代から、この国が「開国」の状態が、そんなに常態としてあったのかな、ということ。
 
もともと島国という特殊性もあるとは思うのだが、異民族に侵攻されたことがないっていうのは周知のことだし、なにかしら「閉じて」「自分仕様」の状態であることに心地よさを感じたりしているのが実感。
まあ、そんなガラパゴスしやすい日本の中でも、PCの世界は、いまさら言うまでもなく、昔も今もガラパゴスなのでは、と思っている。
なんといってもメーカー製のPCでバンドルされたソフトを使って、というのが一般の状況で、デスクトップの世界では自作の灯もゆらゆらと小さくなりつつあるし、OSだけのノートPCっていうのもほとんど見ない、っていうのがその表れなのではないかしら。
 

2013年2月16日土曜日

Win8苦戦中ということらしいのだが・・・。やむをえないか・・。

asciiデジタルの「新Officeも起爆剤とならず--Win8の苦戦はいつまで続く?」によると
 
BCNの調べによると、2007年1月に発売されたWindows Vistaの際は、発売3ヵ月後時点で、販売されたPCの79.8%を新OSが占める結果となり、2009年10月に発売したWindows 7では69.4%が新OSとなっていた。それらに対して、Windows 8では、発売3ヵ月後となる2012年12月の集計では47.3%と構成比は半分以下。2013年1月の集計でようやく67.5%と3分の2を占める水準まで高まってきたところだ。しかし、それでもまだ、従来OSの3ヵ月時点での構成比には達していない。
 
ということのようなのだが、まあ、むべなるかな。
 
個人的には1月末までアップグレード・キャンペーンがあったので、自分用のWindows7ノートPCと子供のWindows XPパソコン、そしていつかやるであろうデスクトップか茶の間のWindows VistaのAVPC用にアップグレードのダウンロード・パッケージを買ったのだが、今のところの感想としては、優待版を手に入れておこうとうセコイ考えがなければ、まあ、待ってもいいじゃね、というのが正直なところ。
 
というのが、今回のOSバージョンアップの目玉が「タイル」であったわけだが、タッチ機能が使いたいのが本旨ならばiOSやAndroidのタブレットを使えばいいわけで、どうかするとWindowsタブレットは数が少ない上に、やけに高価なのである。そもそもPCという形に拘るのはキーボードなしではどうも落ち着かない、というところなので、タッチ機能は興味深いかもしれないが、なんとなくタブレットでは落ち着かなくてPCを所有する人のニーズにぴたっと答えているように思えないのだ。
 
まあ、いずれ市販のPCはWindows8一色になるのは間違いないのだが、キーボードつきという視点でみれば特に8にこだわる必要もないわけで、Macの人気を突き崩せるの?と思わざるをえないし、どうかすると今はすっかり下火になっている(と個人的には思っている)UbuntuなどのLinuxの利用に火をつけてしまうおそれすらあるように思うのだが、いかがだろうか。

2013年2月15日金曜日

ウェアラブルの時代か

つい最近、iPadやNexusとかが一般家庭で認知されてきたと思っていたら、どうやらappleがウェアラブル・コンピュータの開発に着手したとのこと
 
 
アップル、「iWatch」開発の可能性浮上 - ウェアラブル分野参入への布石か
 
アップルがスマートウォッチを出す動機と時期
 
appleの開発はなかなか製品化まで時間がかかるものや、初期のappleTVのように、製品化されてもうーむといった製品もあるから、開発を始めたといっても製品化されて私たちの手元にくるのは時間がかかるのだろうが、なにはともあれ、PCの進化の方向性がビルドインされたことには間違いない。
 
それはPCがいままで歩んできた道をみれば当然予想されるものではあって、大型コンピュータ→デスクトップ→ノート→タブレットないしはスマホとたどってきた道の先は、より人の身体に密着し、より人の精神に寄り添う形をとっていくのは自明の理ですらある。
 
ただまあ、単純にウェアラブルということでよければ、モデルチェンジ前のiPod nanoがそれ用のリストバンドを装着すればウェアラブルのミュージックプレイヤーがセットされた時計などの数々の機能をもったガジェットとなっていたことは間違いなくて、今開発されようとしているものが、そういう類のものであればappleも名折れというものだろう。
 
できうれば、iPhoneやiPadが私たちの生活スタイルにとんでもない影響を与えたように、今回のウェアラブルPCもそうしたガジェットであってほしいもの。これがappleにとどまらずgoogleグラスなんかと連携できることになれば、その可能性はもっと広がるわけで・・・。
そうした期待を持ちながら、一般の愛好家としては、楽しみに待つこととしましょうか。

2013年2月11日月曜日

タスク管理とプロジェクト管理を改めて考えてみる

昨日、佐々木正悟氏の「スマホ時代のタスク管理 「超」入門」を注文したところなのだが、、そのせいか、改めてタスク管理とプロジェクト管理を考えてみるために同じ筆者の「クラウド時代のタスク管理の技術」と「できるポケット「公式ガイド」Nozbe クリエイティブ仕事術」を読んで、自分なりのやり方を考えてみた。
 
考えてみたはいいのだが、二つの本とも自分的にはどことなくしっくりこないところがあって、それはいずれも「自分」からスケジュールというか仕事の段取りを動かしていけているというところ。
これはお二人とも自由業ということがあるのかもしれなくて、いわゆる普通の雇われの勤め人は、自分でタスクの進捗やスピード管理や、優先付けができる場合ばかりではない、というか、そのあたりはほとんど外部要因によらざるをえないというのが違和感の原因のようだ。
 
これは地位の上下、というもので解決できるものではなくて、上司のわがままに左右されるよな、と思っている人は、部下の出来具合や取引先のきまぐれに、当の上司が悩まされているのを知らない場合が多い。自分の少ない経験に照らしても、若いころは上司の指示によって自分の思う仕事の優先順位と段取りがぐちゃぐちゃになることは日常茶飯事であったのだが、管理的な立場になった今は、部下の仕事の出来具合とか調子に左右されることが大半で、今に至るまで自分だけの力量でスケジュールやプロジェクトがコントロールできたためしがない。
 
と愚痴を言ってもしょうがないのだが、外部要因というものを抜きにしてタスク管理というものを考えないと、管理のシステム自体が破綻してしまう恐れがあるというところを踏まえないとタスク管理、プロジェクト管理自体が脆弱なものになってしまうと思うのだがどうだろうか。
 
てなところで、OminifocusやNobzeに浮気せずにToodledoでどこまでできるかやってみるので、また機会あればレポートしましょうか。
 

2013年2月10日日曜日

佐藤 優「読書の技法」(東洋経済新報社)

評判と評価の程はいろいろあろうが、インテリジェンスと外交問題では識見の高い筆者の読書論。
もともと外務省時代から、その知識量や情報量にかけては外務省きっての人物であった人の読書論、いや読書論にとまらず情報の処理論と知識の集め方、身のつけ方の処方というべきなのが本書。

構成は
第Ⅰ部 本はどう読むか
 第1章 多読の技法ー筆者はいかにして大量の本を読みこなすようになったか
 第2章 熟読の技法ー基本書をどう読みこなすか
 第3章 速読の技法ー「超速読」と「普通の速読」
 第4章 読書ノートの作り方ー記憶を定着させる抜書きとコメント
第Ⅱ部 何を読めばいいか
 第5章 教科書と学習参考書を使いこなすー知識の欠損部分をどう見つけ、補うか
  【世界史】
  【日本史】
  【政治】
  【経済】
  【国語】
  【数学
 第6章 小説や漫画の読み方
第Ⅲ部 本はいつ、どこで読むか

となっていて分量的には第Ⅱ部もかなりあるのだが、個人的にも読者的にも、やはり興味を引くのは第Ⅰ部の読書の手法の様々だろう。

といって、多くの速読法といった読書技術を競うものではなくて、それぞれの分野の基本をどう熟読するか、どうエッセンスを抽出するか、といった技法が愚直な在り様で教示されているのは、表現者として誠実といっていい。とりわけ、「すでに十分な知識のある分野」でないと速読しても得られる成果はほとんどない、といったあたり、技術一辺倒の速読術への痛烈な批判といっていい。

まあ何はともあれ、本書で語られるのは、知的生産を行ううえで必須である「読書」を通して、知識の集積をどうするか、について「熟読」「超速読」「速読」というステージごとに論じられる手法は、これから知的生産と表現活動を志す人たちにとって参考となることは請け合いである。しかもその手法が、有体にいえば「要点を掴むよう読み、まとめ、ノートに記す」という手間のかかるもであるが故に信頼してもいいのでは、と思う次第なのである。

手法そのものをあれこれ紹介するのは、こうした読書論・技法の書籍のレビューとしては反則行為であるから詳述はしないが、読書手法のノウハウを知るという目的だけでも一読しておいた方がよいと思う一冊である。
(本書で紹介されているテクニックはた別の機会に・・・)

2013年2月3日日曜日

Kindle Paperwhiteを買った

Kobo touchを持っているから、まあいいかと思っていたのだが、いつまでたってもiOS対応は進まないし、ショップの使い勝手と販売書籍の増え方も・・、と不満がたまり、とうとうKindle Paperwhiteを買った。
 
注文は1月27日夜で、届いたのが1月29日なので注文してから3日程度で届いている。ひと頃に比べ、在庫は十分になっている模様。
 
で、届いてさまざまにHackをと思っていたら、仕事上で緊急事態が発生したので、落ち着いていじれるようになったのが、この休日まで伸びてしまった。
Kindle本の読み勝手は、当然専用端末なので快適だが、Kobo touchに比べ少しずっしりと重い感じがするのは意外なところ。
 
で、ひとまず、自炊本の処理なのだが、加工はKoboと同じchainLpを使用。設定とかはあちこちのサイトを見て適当にやったので、また改めてまとめてみようと思っているのだが、pdfとかePubとかでなくmobi形式のファイルで読むとストレスなく読めるのは間違いないところ。
 
残念なのは、やはり容量の限界。
自由に使えるのがシステム全体としては2Gとはなっているが、実際には1.3G少々しかない。今回、20Mの自炊本(PDF)をmobiに加工すると大体1Mぐらいの大きさになったので、まあ、10冊程度を持ち歩けばいいところ。Koboの場合は32GのSDカードが使えるので、この差は結構大きい。
 
シリーズ本とか、とりあえずピックアップしておきたいものはKoboに入れておいて(あと、自炊本を家族が読む場合のガジェットとしても使うとして)、読書中の本はKindleで持ち歩く、というのが当面の使い方になりそうですね。