2006年2月4日土曜日

エリス・ピーターズ 「修道士の頭巾」(教養文庫)

修道士カドフェル・シリーズの第3作目。

年代的には1138年の冬。第2作は、この年の前半にイングランド王スティーブンと女帝モードとの争いがシュールズベリで行われていた時のことなので、かなり血なまぐさい話が多かったが、3作目は、そのしばらく後の話。
修道院長が、スティーブン王の要請でローマ教皇庁から、体制改革のため派遣された枢機卿に呼び出され、副修道院長が実権を握ろうとするなど、内戦の余波はあるが、まあまあ平穏な時期のが舞台となっている。


事件は、この修道院に財産の全て(金とか宝石とかじゃなくて荘園まるごとなのが豪快)を寄付して、食事とか飲み物、住宅の提供を受けて余生を過ごそうとしている金持ちの老人の殺人事件である。

ところが、この殺人の道具に、カドフェルが鎮痛の貼り薬として調合している薬が使われ、しかもその薬が、副修道院長が、お裾分けで、その金持ちに届けた料理に仕込まれていた、といったところから修道院あげての捜査となり、カドフェルが捜査に関わらざるをえなくなる。

しかも、その金持ちの老人の後妻は、カドフェルが若い頃、将来を約束しながら結婚できなかった女性。そして、女性の連れ子に殺人の嫌疑がかかる・・・・

といった、ちょっと、ひところのメロドラマっぽい筋立てである。

「修道士の頭巾」とはトリカブトのこと、ということで、ちょっと昔に話題になったトリカブト殺人事件が頭に浮かんだが、このお話は、そういったトリック系の話ではなく、誰が、どんな理由で殺したのか、といった系統のミステリー。

犯人になりそうな奴で

・継父と仲が悪くて、今は職人の修行をしている義理の息子

・嫡出子でないが故に荘園の相続権がなく生活費だけもらっている息子

・小作のつもりでいたら、いつの間にか農奴になっていた使用人

とか、登場する。

事件解決のヒントが、イングランドとウェールズの法律の違いといったことだったりして、イングランドとウェールズってのは別の国だったんだな(今でもサッカーやラグビーは違うナショナルチームを出してるから、英国ってのは連合王国であって、意識的には別の国なのかな・・・)ということを最後に感じさせてくれる。

この、お話でカドフェルは、昔の恋人の息子を守る善玉になってるわけだが、どうも十字軍に参加して、オリエントでなにやら自由気儘に暮していたっぽい印象を受けるから、本当は、女性泣かせの夢見る起業家って感じに修正しなきゃならないのかな、とも思う作品である。

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