2006年2月1日水曜日

中谷美紀 「インド旅行記1 北インド編」(幻冬社文庫)

旅本というのは、旅の記録を読むというほかに、著者を読んでいるようなところがあって、著者の旅ぶりがしっくりくると、その著者のものを続けて読んでしまうが、そりがあわなかったりすると、どうにも読み進められないきらいがある。

そういった意味で、女優さんや歌い手さんの書く旅本というのは、あたりはずれがおおきいのだが、中谷美紀さんのこの本は、美人で神経質な雰囲気がそこかしこにでているあたりが、かえってしっくりきた。

なにしろ、旅の発端というかきっかけは「嫌われ松子の一生」の映画撮影に、とことん絞り尽くされたあげくなのだが、その目的が、「ヨガ」「インド」なのである。
キレーな女優さんなら 「ヨーロッパ」やろー!! 「エステ」やろー!!と思わず呟いてしまうのだが、そのインドを一人旅してしまうところが、この旅本がありきたりの女優の旅本とは違うところだろう。

で、インドはというと、やっぱりインドはインドである。こうした女優さんがヨガをやりに来ようが、その女優さんが、インドで突然ベジタリアンに目覚め、野菜のカレーなどばかりを食して、タンドーリチキンなぞには目もくれなくなろうが、やはりインドはインドらしくて、バクシーシはあるし、ガイドやリキシャの運転士は、隙あればボロうとするし、盗難にはあうし、でも、親切な人はしっかり親切で、やっぱり暑い、という具合なのである。

こうしたインドに対して、チューブ入りワサビをもちこんで消毒(といっても、食後になめるといった乱暴なものなのだが)したり、たまには中華料理、タイ料理を食べて、東アジアの人としてのアイデンティティを取り戻したりするのだが、最終的には、「インド」に屈伏して結構ボロボロになってしまう、という定番的展開となってしまうのが、やはりインド旅行記らしい。

一定の地歩を確立している女優さんの一人旅なので、ほかのバックパッカーものと違って、きれいなところが多いし、危ないところは少ないのだが、中谷美紀さんの違った一面が覗ける旅本である。

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