2005年12月3日土曜日

沼上 幹「組織戦略の考え方」(ちくま新書)

会社をはじめとして、いわゆる「組織論」に関わっている人には、例えば日本的経営を賞賛する風が一点してアメリカ型組織を絶賛する風に変わってしまったことへの違和感など、参考になるところや同意できるところも多いと思う。

構成は

第1部は組織に関する基本的な議論
第2部は日本の組織の劣化に関する議論
第3部は組織の腐り方についての分析、対処法

まず官僚制である。筆者は、「官僚制」を悪者として扱ってはいない。それどころか、

官僚制は組織設計の基礎であり、基礎ができていない組織は凡ミスを繰り返すものであり、各人が自分で判断できる問題をほとんど自動的にミスなく解決し、判断に迷う問題を即座に上司に委ねる、といった一連の作業を至極当たり前のように遂行する組織であり、創造性や戦略性が官僚制組織という足腰に支えられている効率的で信頼性の高いアウトプットを生み出す組織の基本モデル

と非常にもちあげていることが斬新。たしかに官僚制を批判、否定してできあがるスタッフ型の組織も、どことなくライン制、官僚制の匂いにする中途半端なものになっているのが多いことを思い起こす。

そして最近のカンパニー制をはじめとする組織論の動向の場面では

マトリックス制は内面的な葛藤処理を健全に行えるタフなミドルが不可欠。しかし、なぜこれほど大切なことをボスたちでなく、ミドルが悩まなければならないのだ

といったところには、中間管理職の身として、うんうんとうなづいてしまう。

「第2章 組織の疲労」では組織が機能不全を起こす要因として「決断不足」の問題が語られる。

決断が不足しているためにずるずると業績を落としている企業などは普通の意思決定をスムーズに処理できる人は多いのに、自分が責任をとって何かを大胆に決めることのできる人はすくない。特に批判する人と称賛する人に社員が真っ二つに分かれる、というタイプの辛く厳しい決定を自分一人の責任で遂行できるというタイプの人が不足している

といったいわゆる誰も肝心なことを「決めない」組織特有の様子にはおもわず納得。

そして最終章の「組織の腐り方」である。ここでは、なぜ組織は腐るのかという問題に
「ルールの複雑怪奇化」と「成熟事業部の暇」と言う答えをしめしているが、結論としては、組織はほっといても腐るから、防腐剤はこまめにいれないと駄目よ、といったところ。

理念的な組織分析も多いから、組織の一つの駒として動いている身としては、言われても、どうしようもないことってあるもんなーと思いながら、ついつい最終章まで読んでしまった。

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