2005年12月6日火曜日

辺見 庸 「もの食う人々」(角川文庫)

アジアから、ヨーロッパ、アフリカまでの様々な国で、人々は何を食っているかのルポである。平和な国から内戦が続いている国、内戦が終わった国まで、様々な国が登場する。

食べるものも様々なら、食べる人も、食べる環境も様々

バングラディシュでは、安さにつられて残飯の再販売に手を出しそうになったり

フィリピンのピナツボでは失われたジャングルの味に想いをはせ

フォーを残すベトナムの人に戦乱の終結と資本主義の浸透を感じ

ポーランドの炭鉱では、作業に参加した後のスープに舌鼓をうつ反面後日、作業をしないでのんだスープの味気なさを感じ

セルビアの国境付近の海で漁をし、鯖や鰯の焼き物やオリーブオイルがけを漁船の上で堪能したり

ソマリアで各国の国連軍の兵士のお国料理をいれた携帯食料(レーション)と、現地の人の何もいれない、何も味のない、一握りのぶつぶつ切れるパスタの格差に呆然としたり・・・・


普通の人が食べているものは、文化といういうよりも、その国の置かれている状況に、質も量も影響されるだけに、極度に政治的であり、経済的事情の産物である。
そこにあるのは、名物料理に象徴される歴史と伝統ではなく、金と力という現実である。

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