2005年12月3日土曜日

西村 淳 「面白南極料理人」(新潮文庫)

第38次南極観測隊ドーム基地越冬隊に参加した筆者の、越冬記録というか料理記録というか、おもわずニンマリしてしまう南極日記、「西村 淳 「面白南極料理人」(新潮文庫)」である

総勢17名で、1年間にわたる南極のドーム基地(どうやら、日本にいると極北の象徴である昭和基地ですら環境のよい所と思えるような南極の観測基地らしい。)で暮らした観測隊の生活が描かれている。

南極基地といえば、「南極物語」の映画とか、毎度おなじみ紅白歌合戦の昭和基地からの「白組ガンバレ」の応援メッセージ(最近、紅白をじっくり、見ないからわからないが、まだやっているのかな)ぐらいの印象しかない。そんな南極も、真面目な科学者が集まり、隔絶された環境で、しかもまわりは雪と氷ばかりの環境で1年間暮らすとなると、突然、いろんなエピソードが出現するものである。

山海の珍味というか、かなり大量の良質の食材を持ち込んで、しかも、食うことが唯一の楽しみみたいな職場・居住環境だから、どうしても、毎日の料理の話とかが多くなるのだが、あちこちに極地らしい話が散らばっている。

補給に一番苦労するのは水だとか(原料の氷は大量にあるのだが、溶かさないと水にならないから、水をつくりのも一作業)、酒もしばらく置くと凍ってしまうので、常飲するのはアルコール度数60~70度のウィスキーだったり、燃料(南極の低温でも凍らない特製の軽油があるらしい)が底をつきかけ、ドラム缶運びにエラク苦労したり(車もラジエータやバッテリーの不凍液を抜いておかないと、不凍液が凍って使い物にならないらしい)

17人の人間が、閉鎖された環境の中で1年間暮らすわけだから、喧嘩や諍いがしょっちゅう起こってもおかしくないのだが、なんとか、仲良く1年間を過ごしている。筆者の料理と毎日宴会状態の基地ぐらしのせいかな、と思ってみたり。

そのほか、二日酔いの翌日、筆者がインスタントラーメンをつくっていると、隊員たちが匂いにつられて、集まってきて、ついには臨時ラーメン屋状態になるところは、日本人らしいエピソード。日本人はインスタントラーメンがないと生きていけないものらしい。

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