2005年12月7日水曜日

岩合日出子 「アフリカポレポレ」(新潮文庫)

旅行記、滞在記としては、珍しい部類に属するアフリカを舞台にした 「岩合日出子 「アフリカポレポレ」(新潮文庫)」を読む。

動物写真家の旦那さんに同行して、アフリカのタンザニア、セレンゲティ国立公園に一家で過ごした記録である。

「ポレポレ」とは、スワヒリ語で「ゆっくり」の意のようだ。働きすでては体がもたない、急いだところでなんになる、また明日にしようじゃないかーということらしい、と筆者も自分に納得させるかのように書いている。

「ポレポレ」とでも言ってないと、確かにキレてしまいそうな毎日ではある。

最初は家がみつからない、水が出ないといったトラブルから始まり、住む家が見つかれば見つかったで、食料の確保と、虫(蟻、ハエ)の侵入に悩む毎日である。

おまけに、動物カメラマンの旦那さんは、旦那さんで、当たり前のように動物写真の撮影に夢中だから、視点の先にあるのはサバンナ、サバンナ、サバンナであるし、一人娘の薫ちゃんは、いくらしっかりしているとはいっても、まだ小学校入学前の幼児。家族の日常的で、そのくせ最も基礎的で手間の食う仕事(食事、掃除その他生活雑用もろもろ)は、筆者の肩にずっしりとのしかかってくる。

でも、というか、こういった滞在記のお決まりというか、筆者はめげないのである。むしろ、たんたんと、日常をこなし、たまにはサバンナへ、旦那さんの撮影に同行して行ったり、まさに「ポレポレ」を実践して、時には旦那さんにやつあたりもしながら、薫ちゃんをどやしつけながら、生活を支えていくのである。

そして、こうした苦労のかわりに、手に入れるのは、家族とりわけ娘の薫ちゃんとの濃密なふれあいである。まわりに日本人がいないのは当然として、娘と遊んだり、いろいろ考えたりする題材には事欠かない。

死んでしまったシマウマを前にして、「シマウマの子供は死んでいます。死ぬと・・・。骨になります。それが・・・。自然のきまりです。」と子供が言うほどの題材を持てる人はまれであろう。

1年半のタンザニア暮らしの後、日本に帰ってから、薫ちゃんは、「タンザニアはつまんなかった。だって、お友だちはパパとママだけだったから」といっていたそうだが、ここまで、濃い家族の生活を私たちはもっているだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿