2006年3月5日日曜日

アガサ・クリスティ「ビッグ4」

ポアロものには珍しく、冒険アクションっぽいストーリーである。


発端は、ポアロの古くからの友人で、ホームズものでいうワトソン役をつとめるヘイスティングスが、南米から帰ってくるところから始まる。
彼がポアロのもとを訪ねた時に、泥まみれで憔悴しきった男が訪ねてくる。男は不意に「ビッグ4」のことを喋り始め、そのまま昏倒する。その男が、ポアロの留守中に、何ものかに毒殺される。しかもさるぐつわをはめられたままで・・

といったところから物語は始まる。

"ビッグ4"というのは、

ナンバー・ワンはリー・チャン・チェンという名の中国人で、中国の実質の支配者
ナンバー・ツーはアメリカ人で、金力の象徴
ナンバー・スリーは、女性でフランス人。花柳界の妖婦という評判。
ナンバー・フォーは、実態がわからない。ただ「破壊者」と呼ばれている。

といった設定で、どうも、この"ビッグ4"が世界の支配を企んでおり、ポアロのところを訪ねた男は、その魔の手から逃れてきた男らしい。


この後、

ビッグ4に追われているホェイリィという老人が殺されたり、

科学者のハリディが誘拐されて、その救出の過程で、ビッグ4のナンバー・ツーが、実はフランスの有名な女性物理学者であることが判明したり、

ナンバー・フォーの昔の妻だったと名乗る女が殺されるが、彼女の洩らすナンバーフォーの癖が、最後まで重要なキーであったり、

はたまた、ポアロのアパートにマッチ箱にしかけられた爆弾が爆発し、ポアロがあわや死んだのでは、と思わせるような展開があったり、

そして最後に、ポアロがビッグ4のたてこもるイタリアの城に潜入し、敵の野望を打ち砕くが、そのために、ナンバーツーを寝返らせるため、ポアロのとった手は・・・・。

といった展開なのだが、なんとも最後まで違和感がつきまとった。

どうも、私の頭の中で、灰色の脳細胞をもつ、ずんぐりとした小男と、この話で展開される冒険アクションとが、うまく結びつかないせいらしい。


いつもの「ポアロもの」と思って読むと、ちょっとアテがはずれる。

「ポアロ外伝」あるいは「ポアロ異聞」くらいのつもりで読んだほうがよい。

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