2006年3月13日月曜日

アガサ・クリスティ「メソポタミアの殺人」

事件の舞台はメソポタミア。今のイラクかな。アッシリアとかの発掘作業をしている作業チームの宿舎が現場になる。

話は、看護婦である エイミー・レザラン が遺跡調査をしている考古学者 エリック・レイドナー から妻の ルイズ の付き添いをしてもらいたいと申し出られるところからはじまる。

このルイズという女性、何かの「恐怖症」にかかっていて、神経衰弱になっているというのだ。
遺跡発掘を行っている町に着き、ルイズが恐れている原因を聞くと、彼女は既に(第1次世界大戦中に)死んだはずの前夫からの脅迫状に怯えている。(この前夫っていうのをドイツのスパイだとルイズが告発したのが死んだ一因のよう)この脅迫状は、彼女が誰か別の男性と結婚しようとすると、きまって舞い込んでくる。レイドナー博士と結婚するときは、こなかったので安心していたら、結婚して数月したらやってきた。
この発掘現場にも脅迫状が届くようになり、おまけに時折、仮面のような顔が窓から覗く時がある。
この脅迫状が段々エスカレートしてきて、ついには「殺す」といった文面になった、とのことである。

この脅迫者は、、本当に前夫なのか、彼は生きているのか、あるいは他の者が、ルイズに恨みを抱いているのか・・・と、脅迫状の犯人探しをしているうちに殺人事件がおこる。

殺されるのは

ルイズ

である。

彼女は、部屋で石臼で撲殺される。しかし、部屋に鍵かかかっているし、発掘チームの面々にはアリバイがある。
この事件に偶然、バクダッドに旅行にきていたポアロが、この殺人事件の捜査を頼まれることになる。
ポアロが「殺人は癖になりますから、要注意ですな」なんてノンキなことを言っているうちに第二の殺人事件がおこる。

今度は、レイドナー博士の長年の助手をしている アン・ジョンソン

彼女は、酸を飲まされ、気管や食道を焼けただらせて殺されてしまう。彼女が死ぬ間際に言い残す言葉 「窓」 は一体何を意味するのか、犯人はルイズの前夫なのか・・・

といったことを軸にしてポアロの推理が展開していくのだが、オチは、クリスティのミステリーによくあるように、「犯人は身近にいる」ということと「犯人に見えない奴が犯人」言い換えれば「善人が実は犯人」、もう一つ言えば、「美しいものは独占したくなるよねー。でも美人って浮気だよね」といったところ。(これ以上は、下手なネタバラシになるので、このあたりでやめとこう)
<br>
この「メソポタミアの殺人」も一種の密室ものである。一体に、犯人の候補者が次から次へと増えていくのは、ちょっとアンフェアでしょ、と感じることが多いのだが、シチュエーションから犯人の候補を発掘隊のメンバーに限っていくように筋立てをもっていくあたり、やはりクリスティの筆運びのうまさだろう。安心して、ポアロの謎解きが進んでいくに身を任せていればいい。


筋立てとは関係ないのだが、この「メソポタミアの殺人」にも、クリスティのミステリーによく登場する、男性に人気があって、ちょっと小悪魔的なくせいに無邪気な、金髪に美人が登場する。そして、いつものように彼女に対するクリスティの扱いというか仕打ちは、非常に冷たくて。案の定、殺人の被害者とされてしまう。どうも、小説の形を借りて、こうした美人たちに合法的な復讐をしているように思えるのだが、どうだろうか・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿