2006年4月15日土曜日

北村 薫 「六の宮の姫君」(創元推理文庫)

「私」と「円紫師匠」のシリーズも、これで4作目。シリーズ開始当時は1年生だった「私」も大学の4年生となり、就職活動も開始しないといけないし、「卒論」も書かなきゃいけない時期である。


今回の事件は、その就職活動とその卒論がきっかけだ。いや、事件という言葉は適当ではないだろう。この「六の宮の姫君」では、何かが盗まれたり、誰かが殺されたり、といった事件らしい事件はおきない。

というのも、「私」がアルバイトをしている先の出版社で、文壇の長老(うーむ、古式ゆかしい言葉だ)が、まだ若い頃、芥川龍之助が自分の作品である「六の宮の姫君」を評して、「あれは玉突きだね・・・。いや、というよりはキャッチボールだ」と言っていた、という話をきかされ、その意味を探っていく「書誌ミステリー」あるいは「文学史ミステリー」というものである。


「六の宮の姫君」っていうのは、今昔物語に題材をとった話で、「ある貧乏貴族の娘が親が亡くなってからどんどん落魄していく、ようやく面倒をみてくれそうな男ができたのだが、その男も父親の地方の国司就任に伴って地方へいきなかなか帰って来ない。ようやく帰ってきたところが、姫の屋敷はすでに荒廃していて、都中を探すと、姫は乞食同然になっている。男と会うと姫は長年の無理がたたり、死んでしまうのだが、死ぬ間際に、どうしても声明が唱えられず、極楽と地獄の間を彷徨う亡者となってしまう」っていう話のようだ。


なんで、これがキャッチボールなんだ、というわけで、主人公の「私」は、芥川龍之助に関する書籍を調べまくる。途中、谷崎潤一郎や正宗白鳥、菊池寛やら、なんか学校の教科書にでてきたような記憶があるんだがなー、といった近代文学史を彩った人物がごちゃごちゃ出てきて、最後、「キャッチボール」の意味は、「時間を超えた情念の投げ合い」なのか、といった感じで、かなり賢っぽく、インテリっぽく展開していくのだが・・・。

すいません。どうも、こうした文学史っぽい話に疎い私としては、いまいち乗り切れませんでした。

古典や純文学といった方面の好きな方には「お薦め」と想像するミステリーです。
あの人が絞殺されたのだの、この人が毒殺されたのだの、血生臭いミステリー専門のかたは、ちょっと敬遠してしまうかなー。

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