2006年4月10日月曜日

小泉武夫 「地球を肴に飲む男」

発酵・醸造学の権威であるとともに、「食の探検家」または「歩く胃袋」「カニクイザル」などなどの異名をもつ小泉先生の食エッセイである。当然、エッセイの中心は酒と肴が中心なのだが、その酒も、肴も只者ではないというか、ありきたりのものではない。
 
例えば、「虫を肴に酒を飲る」では、メキシコのメスカル(テキーラ)の飲み方。メスカルというのはテキーラのコクを出すというか飲みやすくするために蛆虫とか蜂の蛹をいれたものらしいのだが、 
 
その飲み方は 
 
洗面器のようなものの上に笊を置いて、その上からメスカルを注ぐんです。すると、瓶の中に入っていた何百匹という蛹は笊にひっかかるのですが、酒は笊の目を通って洗面器に集まります。その酒を瓶に戻してから飲み始めるわけですが、笊に残った虫の幼虫は、そのまま男たちの酒の肴になるんですね。 
 
 
といった具合だったり、あるいはラオスで 
 
 
皮を剥し、背骨を中心にして、開いた肉身をそのまま燻して、乾燥状態で売っている、ネズミの燻製を肴に、道端で老婆と酒盛りをしたり 
 
といった具合である。 
 
 
もちろん、医者が禁ずるほどのフォアグラを食したり、モクズガニをつぶして味噌で味付けしたものを湯の中に落とし、絹ごし豆腐とネギで食べるモクズガニのフワフワ汁など、普通でも涎のでそうなものは食べているのだが、この先生の食エッセイの醍醐味は、こうした得体の知れない食べ物の数々を、楽しみながら(まあ、何度かは吐きながら、ということでもあるようだが)胃の腑におさめていく、小泉先生の健啖さである。 
 
まさに「戦う胃袋」である小泉先生の戦闘の日々が、また続いていくであろうことを期待するのである。 
 
 
それはともかく、先生の命名する「シンデレラリカー」、酒やワインの酒粕を蒸留した、いわゆるカストリや、ブルゴーニュのワインやポルトガルのポートワインの澱を飲むあたり、なんとも旨そうで、思わず喉がなった次第であります。
 

 

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