2006年4月14日金曜日

アガサ・クリスティ 「火曜クラブ」

「マープルおばさん」のデビュー作である。ハヤカワミステリでは、この表題になっているが、創元推理文庫版は「ミス・マープルと13の謎」という表題。

創元推理文庫版の表題どおり、13の短篇が収録されている。


設定は、マープル伯母さんの甥のレイモンド(小説家をやっているらしい)を筆頭に、元警視総監、女流画家、女優などが、自分が出会ったり、見聞した昔の難事件(真相は、話をする当人は知っているのだが)を語り、その真相をあてるという趣向の「火曜クラブ」で、編みものをしながら傍らで聞いている「マープル伯母さん」が次々と犯人をあてたり、謎を解明していくという安楽椅子探偵物。

収録されているのは
「火曜クラブ」「アシタルテの祠」「金塊事件」「舗道の血痕」「動機対機会」「聖ぺテロの指のあと」「青いゼラニウム」「二人の老嬢」「四人の容疑者」「クリスマスの悲劇」「毒草」「バンガロー事件」「溺死」


謎解きすべき事件や犯人は多種多様。
エビの食中毒にみせかけた毒殺事件(「火曜クラブ」)や、沈没した船に積まれていた金塊がごっそりなくなっていた「金塊事件」、壁紙の花のプリントが青く変色するとき、その家の女主人が殺される「青いゼラニウム」や、雇主の女性が普段は仲の良かったコンパニオンを殺すという「二人の老嬢」(この話の途中に「他人から見たら、老嬢は誰も同じに見える」といった今なら女性蔑視でとっちめられそうなくだりもあり、思わず頷いてしまいそうになる)などなど、13の話がそれなりに趣向が凝らされ、奇妙な事件に仕立てあがっている。

おまけに、この犯人も細工が込んでいて、財産目当ての女性が偽装をこらしたり、可愛さ余って、人に嫁がすのがおしくなる老人がいるかと思うと、若い男に勝手に惚れて、その男のために殺人まで勝手におかしてしまう中年女性がいたり、と多士済済である。


それぞれが文庫判で20ページから30ページ程度の短篇なので、謎が語られはじめたと思ったら、すぐさま謎解きが始まるという忙しなさはあるのだが、マープル伯母さんの謎解きの前に必ず挿入される、ミード村の村人の逸話が妙に楽しみになること請け合いである。


このミード村の様々な話については「舗道の血痕」の最後のくだりで、マープル伯母さん自身が

「わたしはね、この世の中におこることは、なにもかも似たりよったりだと思うんですよ。」
(中略)
「村の生活にだってずいぶんといまわしいことがあるものですよ。この世の中がどんなに悪辣か、あなたがた若い人たちが思い知らされずにすむといいと思いますけれどねえ」

と語るところに凝縮されていると思うけど、こんなに事件が起きる村ってのは、ちょっと治安が悪過ぎるような気がするのだが、どうだろうか・・・・・・。

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