2005年11月18日金曜日

マイケル・デル「デルの革命」(日経ビジネス文庫)

皆さんもよくご存知であろう、DELLの総帥の著書である。
コンピュータ販売をダイレクト販売・インターネット販売という方策を使って根幹から変えてしまい、今では世界ナンバーワンの売り上げを誇る企業にまで急成長させた経営者自らの話だから、かなり斬新で、エクセレンスである。

成功した人が、成功した手法について語っているため、成功の理由を後でつけた感の部分があるのは否めないのだが、やはり、あの当時、こうしたダイレクト販売を始める、といった勇気と見切りの良さ、アイデアの突飛さは、なかなか真似のできるものではない。
私のような凡庸なサラリーマンは、へーっと驚いて読むしかないような事例が多々あるのと、成功物語につきものの、なにかしらの爽快感、高揚感がある一冊。

そうした、いわゆる成功物語の部分を差し引いても、一流のビジネスマンの発言として、うならされる箇所は多い。

いくつか紹介すると

「まずたくさんの質問をし、それから人の話をよく聞く。自分で喋っている間は何も学べない。あらゆる答えを盛り込んだ現場マニュアルなど存在せず、おおいなる好奇心が必要なのだ」「デルの企業文化では、現状維持を非常に嫌う。私たちは社員が画期的なアイデアを探し求めるような雰囲気づくりに努めている。戦略上大きな課題が生じたときに、社員がその課題に立ち向かい、最善のソリューションを迅速に見つけられるようにするためだ。社員が日常的に「どうすればゲームのルールを変えられるだろう。今まで誰も思いつかなかったようなやり方で、この目標を達成できないだろうか?」と自問自答するように鍛え上げなければならないのである。
 従来の常識に捉われなければ自分にできることは驚くほど大きいものだ。従来とは違う認識をもとに成功した経験があれば、社員はそういう新たな認識を探そうという気になる。
 たえず現状に挑み続ければ成功に目を眩ませてしまわずに済む。今では、デルの企業文化に「自己批判」という要素が浸透している。常に自分自身のアイデアを問い直し、改善する方法を探る姿勢ができているのである。私たちは、トップダウン式にこの態度の模範を示そうと努力している。」

「悪いニュースや失望を前にすると萎縮してしまい、何かの拍子に事態が好転するのではないか期待するのは人間の性なのである。だが、たいていの場合、神風は吹かない。そして、問題に目をつぶって無駄に過ごした時間が、必ずや致命傷になる。事態は非常に速く進展するから、なにが問題なのかを即座に把握し、ただちにその解決に取り組まなければならないのである。
 ダイレクトモデルに基づいた事業では、好むと好まざるとにかかわらず、事実が直接突きつけられる。」

「必要なのは、自分がどうあってほしいかではなく、実際にどうなのかという事実を把握することだ。明確な目標があり、誰もがよく理解している評価基準があれば、問題はかなり早い段階から表面に出やすい。問題を直視し、それをただちに受け入れれば、即座に問題に対処し、迅速に片付けることも可能になる。
 デルの社員は、じぶんたちが問題の一部でもあり、ソリューションの一部でもあることを理解している。」


・・・結構耳が痛いですね。

人の話を聞くより先に話を始めてしまうこと多いし、悪いニュースの時は、特に実際にどうなのか事実を把握するの怖いものなー。

 そのほかにも

◆自分の業界だけを知って満足してはならない

 顧客が過去の取引においてどんな体験を味わったか、ライバル企業との取引だけでなく、それ以外 の企業についてもできるだけ学ぶようにすべきであるトータルとしての顧客体験という点では業界の差はなく、今後サービスの優れた企業は、業種の別  なく、他の企業に差をつけるのである。

◆顧客のためになるかどうか不確かなものに貴重なリソース(時間、資金、エネルギー)を費やしてはならない。ビジネスの世界では、自己満足にすぎないものを作っても絶対に成功しない。ハイテク製品であろうとティッシュペーパーであろうと、顧客が本当の求め必要としているものさけを開発すべきである。そうすれば、顧客はもっと満足し、コストは減少し、収益性はあがるだろう。

◆情報を得るにしても。手段を選べ

顧客との関係で一番大切なのは、親密さである。顧客の様子を探るといっても、たまに電話して、「わが社についてどう思います」と尋ねろということではない。顧客にとって、より親しみやすい、利用しやすい存在になれば、自然な学習の機会も増え、彼らの考えていることを読み取りやすくなる。

◆ハイテクと伝統的手法をミックスする

◆顧客が持っているニーズや懸念、疑問や感性はそれぞれ異なっていることを忘れるな

たとえたくさんの顧客がいても、一人の顧客に焦点を合わせることによって、個別の関心を示せるようになり、可能な限り学べるようになる。」

「競争優位を強化するための差異化の手法」

◆ライバルではなく、顧客について考える

ライバルは、業界の「過去」を体現している。長年にわたって、業界の習慣が体質に染み付いているからだ。顧客は、新しいチャンスやアイデア、成長への道を示す「未来」である 

◆健全な切迫感・危機意識を保つように努力する

いつもよりほんの少し目標を高めに設定し、社員がこれまでより賢く働くことで大胆な目標を達成できるようにする 
◆ライバルの最大の長所を短所に変える 

◆機会を待ちつつ、行動は迅速に 

◆ホームランではなくヒットを狙う 

◆漁師であれ、獲物になるな」

などなど。アメリカ企業の成功者らしく軽快でテンポの良いビジネス書である。

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