2005年11月3日木曜日

ゲッツ板谷「インド怪人紀行」(角川文庫)

ゲッツとカモちゃんの二人が、今度は貧乏旅行のメッカ インドへ旅する。
タイ、ベトナムと定石を踏んできた旅行記も、クライマックスへ。
ところが、なかなか出発しない。今度の同行者のハックやナベちゃんという若者の話や、バンコクの居酒屋でひっくり返ったり、風邪ひいて熱出したりする話が続く。どうも、今回の旅は、同行の二人の若者がいわくありげで、はずみをつけている気配が濃厚だ。

やっとニューデリーから始まるが、ゲッツの体力はかなり限界らしくゲリピー状態。おまけに同行メンバーの中はすこぶる悪い、果たしてどうなるのかーと始まる。感情を押し殺したようなハックと、ドロップアウト癖のあるくせに理屈をつけるナベちゃん。これに瞬間沸騰カメラマンのカモちゃんがからむから、ますます複雑になる。
これはニューデリーを出発し、ムンバイについても変わらない。それどころか、インドの都市特有の猥雑さが輪をかけているようだ。
この旅行記は1994年のインドの経済改革以後のものだから、それ以前のようなとことん中世的なインドからは脱却しつつあると思うのだが、大衆は変わらないということか、
やたら、しつこい物売りやいい加減なホテルは、昔の旅行記と同じだ。
ムンバイの後は、ゴア。ゴアは、この本の当時はドラッグ好きの溜まり場になっていたようだ。(今がどうだかは知らないヨ。アームチェアトラベラーは現地にはいかないのだ)
ガンジス川のほとり、聖地といわれるバラナシでは、安い売春宿で金を巻き上げられそうになるは、トリップしたハックは庭で毒液を吐き散らすはの騒ぎである。おまけに火葬場で写真を撮って、遺族から袋叩きに会いそうになる。どこに行っても騒ぎが起こるのは変わらない。
旅も終わりに近くなる。国境の飛び地インパールである。ここで、子供の死でアヘン中毒のアルコール中毒になったカンプゥというガイドに出会う。説教するゲッツ。それを契機に兄の死以来、感情を押し殺していたハックの復活、そしてカモちゃんとナベちゃんの激突。
インド旅行記は、ここインパールで終わる。おまけにタイ、ベトナムと続いてきた怪人紀行もひとまずエンドらしい。
このインド怪人紀行では、現地の怪人の登場は少ない。なにせ、旅行者自体が怪人ぞろいだからだろう。合間の西原理恵子のマンガは、あいかわらず楽しいので、必見。

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