2005年11月8日火曜日

宮部みゆき 「ステップ・ファザー・ステップ」(講談社文庫)

遺産相続で大金を得た独身女性の家に忍び込み盗みを働こうとした泥棒が、忍び込むときに使った鉤フックに落雷。泥棒は隣家の家に落ちるが、そこで、双子の兄弟(宗野直と哲)に出会う。両親は、それぞれ別々に駆け落ちしてしまっているらしい。

泥棒は、怪我が治るまで、双子の家に匿われるが、盗みの弱みにつけこまれ、双子の親代わりにされてしまうことになるが・・・、というシチュエーションで始まる、ちょっとほのぼのした7つの事件と解決。

「ステップ・ファザー」というのは「継父」という意味らしい。いつの間にか、本当の親と同じようになってくる泥棒と双子の関係が微笑ましい。おどろおどろしい事件はないから、流血や陰惨な事件が苦手な人も安心して読めます。

収録は「ステップ・ファザー・ステップ」「トラブル・トラベラー」「ワンナイト・スタンド」「ヘルター・スケルター」「ロンリー・ハート」「ハンド・クーラー」「ミルキー・ウェイ」

ネタばらしレビューをはじめると

「ステップ・ファザー・ステップ」

泥棒(「俺」)と双子の兄弟の遭遇。本来の目的に立ち返り、双子と出会う原因となった隣家の遺産成金の家に忍び込んだら、なんと鏡だらけの家・・・。

ネタばらしは、「読唇術」と「すりかわり」。

「トラブル・トラベラー」

過疎の町、暮志木町が、始めた町おこしは、ナント、町を岡山の倉敷のそっくりのコピーすること。コピーばかりの町だが、大原美術館に真似てつくった(小原)美術館には、最近、人気の出始めたスペインのセバスチャンという画家の、時価数億の本物の絵がある。

この美術館を訪れていた双子が、町長と一緒に人質にとられるが・・・。

ネタばらしは、「贋作」


「ワンナイト・スタンド」

双子の参観日に借り出された「俺」。双子の学校では、校長へ反対する者からの脅迫文が届いたり、ちょっと騒然としているらしい。そんなことには構わず、授業中に入れ替わり、しかも、それに「俺」が気づくかどうか賭けをしていた双子。「俺」は入れ代わりに気づかず騙されるが、教室の中では、もうひとつの入れ替わりが・・・。

ネタばらしは、「もうひとつの双子」と「裁判所での証言」

「ヘルター・スケルター」

双子の片割れ、哲が盲腸になる。おまけに「俺」は足の小指の爪をはがすという踏んだりけったりの状態。そんな時、家の近くの湖から男女2体の白骨死体が発見される。そういえば、双子の親の顔も何もしらされていない「俺」はもしや、その死体は、双子の親、そして殺したのは、双子?・・・と疑念を膨らませる。

結果は、そんなこともなく、別人の死体なのだが、その転落事故は実は他殺・・・。

ネタばらしは、「飲酒運転にひき逃げ事故」と「別れたがっている亭主を厄介払い」。

「ロンリー・ハート」

旦那に魅力を感じていない奥さんが、文通を始める。(ちょっとシチュエーションが古いのは已むを得ない。この作品が書かれた当時、猫も杓子も携帯電話を持つ時代になるとは想像もできなかったのだから)

亭主の悪口やら、秘密ごとを文通しているうちに、文通相手が、突然脅迫してくる。
脅迫された口止め料を届けようと出かけた先に見つけたのは、頭を割られて死んでいる旦那の姿・・・。

ネタばらしは「犯人は身近にいる」と「弾みのついた石つぶて」

「ハンド・クーラー」

東京の新興住宅地のある家には、毎朝、新聞が庭先に投げ込まれる。しかも、東京から離れた山形の地方新聞。何の目的で、新聞を投げ込むのか?。

ネタばらしは、「昔の恨み」と「新聞をそこまで読む奴はいねーよ」。

「ミルキー・ウェイ」

双子が誘拐される。しかも、別々に。どうやったら、彼らを無事に助けだせるのか。おまけに時間差で・・・。

ネタばらしは、「よくできた偽札」と「偽の親父と祖父」

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