2005年11月27日日曜日

宮部みゆき 「夢にも思わない」(角川文庫)

東京の下町に住む中学生、緒方雅男くんの「今夜は眠れない」の続編。

今度は殺人事件がおきます。しかも、雅男くんがあこがれる同級生クドウさんの従姉。場所は、毎年9月末に虫聞きの会が開かれる、近所の「白川庭園」。おまけに、クドウさんが、その虫聞きの会に家族連れでいくということを聞いて、なんとか偶然の出会いをしようと企んでいたら、雅男くんが発見者になってしまうというおまけつきである。

その従姉(森田亜紀子さん)が売春をやっていたことがわかってきて、学校の皆のクドウさんを見る目が変わってくる。雅男は、大好きなクドウさんを守るために(うまくいけば仲良くなるために)、親友の島崎と犯人探しに立ち上がった・・・という前回と同じノリの立ち上がり。

ところが、前回より仕掛けがだんだん大きくなる。複雑な家庭の犠牲者と思われた従姉が実は、売春組織の結構な顔役だったことがはっきりしてきたり、クドウさんが、その従姉に組織に引き込まれようと再三誘われていたり(組織のチラシにクドウさんの写真がつかわれていて憤慨する場面もある)。

また、僕や島崎の恋愛の方も、いろんな展開を始める。事件がきっかけでクドウさんと仲良くなり、デートまでこぎつけるのだが、なんと親友の島崎と一時期つきあっていたことがわかって動揺したり、島崎は島崎で、事件や組織に何か関わっているような片耳ピアスの女の子と夜に会っていたり。

話は、売春組織の捜査や摘発と雅男とクドウさんの恋物語の進展といった二つの筋を軸に進んでいく。クドウさんにベタぼれ(この女の子も、ちょっと大人しくてはかなげで可愛らしそうなのだ)の雅男の姿に、きっと皆さんも自分の過去を思い出して恥かしくなりますよ。

そして大団円。

亜紀子殺しの真犯人も捕まって、さあ終わり、と思ったら、また、この作者、最後に残してましたよ、地雷を・・・。

「あたし、怖かったの・・・」という女の子らしい言葉が、やりきれない感情を呼び起こすということを、最後の場面で教えてくれる。

(そういえば、最初から別扱いだよな、名前もフルネームででないのがなんか符号っぽいなーと思ってたのだが・・・。でも、筆者の目線は、この人に、ちょっと厳しすぎるんじゃないだろうか。)

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