2005年11月27日日曜日

岸本葉子 「よい旅を、アジア」(講談社文庫)

筆者の北京留学中の揚子江旅行の話から、台湾、香港、シンガポールなどの東南アジアを中心とした旅行記。

揚子江の船の旅で、新婚旅行中の夫婦を兄妹と誤解したり(重慶では夫婦のことを兄妹ということがあるらしい。本当か?)、台湾では、一目ぼれされて、行き先行き先で、やたら丁寧なエスコートや宿泊先の世話をしてくれる青年に出会ったり。(筆者は、この青年のこと、結構好意的に書いているが、行き先行き先で先回りして現れる男ってストーカーっぽいぞ)といった話からはじまるのだが、筆者が(この旅行記の当時は)若い女性のせいか、ほかの旅行記に比べ、華やいだ印象を受ける。

ソウルで会うのは、名門 梨花女子大に通う、結構お金持ちの女の子から合コンの話を聞いたり、ショッピングにつきあったりする話であるし、雲南ではタイ族の年頃の男の子の家でご飯をごちそうになる、台湾では、新婚旅行の団体にまぎれてしまって、ものすごく女性上位の台湾の夫婦に遭遇して、しとやかで従順と思われている日本女性への憧れを披露されたりしている。(奥さんの命令に従って、料理をとっては奥さんに食べさせる台湾の旦那さんの姿はちょっと笑ってしまう。しかも集団で、とは・・・。)

しかし、ところどころ、辛口の場面も忘れない。昔から伝わる面を日本に奪われた伝承をもつ韓国の一寒村の話や上海のフェリー船の中で語られる天安門事件当時の話も語られている。

そのほかに、北京留学中のチベット、シンガポール、香港などの旅行記が収録。
モノクロームな中国本土から、フルカラーの香港に旅行して舞い上がってしまう話が笑える。それも、ストロベリータルトが甘くて衝撃を受けるレベルなのである・・・。

いずれの話も、香港が中国へ返還されるまでの話なので、若干古びている面もあるが、「アジアの旅行記といえば、汗っぽくて香辛料やカレーの匂いがぷんぷんしそうで、ちょっと辟易」と思っている人にお奨めのちょっと小洒落た旅行記。

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