2011年12月31日土曜日

浅田次郎 「蒼穹の昴」(上、下)(講談社) 読後感

大部であったせいか、時代が近いくせになじみが薄いせいか、かなり時間がかかったが、やっとのことで読了。

物語は、清朝末。西太后が実権を握っている光緒帝の時代。一言二言で大筋を言ってしまうと、田舎の直隷省の秀才、梁文秀が進士の状元となり、平行して、彼の幼馴染で貧家の春児が宦官となり西太后に仕えというメインキャストと舞台仕立てで展開する。

当然、時代は清朝が音を立てて瓦解していきつつある時代で、この物語は、いわゆる康有為らの変法自強運動が挫折するまでのを背景に描いている。
けして未来が開けている時代ではないのだが、なにかしら妙に明るい感じをうけるのは、王朝が崩れ落ちるときの美しさというか、長い歴史を持った政権が最後にぱっと燃え上がる時にあたるせいなのだろうか。

主人公である、梁文秀も春児も架空の人物ではあるのだが、その時代に生きた片や富裕な郷紳でしかも進士(おまけに状元(成績トップの及第者)といえば宰相も夢ではなかったはず)と、片や極貧のゆえに宦官となり後宮で実権を伸ばしていく者と、両極端の人物を配しながら、双方ともに感情移入してしまうのは、さすが筆者の腕というべきか。
とりわけ印象深いのは、栄禄、李蓮英といったあたりは、定番どおりあくどい人物として扱われているのに、西太后がけして悪者に描かれていないこと。むしろ乾隆大帝の遺鉢を継ぐ、傾いていく王朝を一人で支える健気な女性といった感じで描かれているところは、他にない特徴。

三部作のうちの発端の物語なので、まだまだ先はある。しかも、これから列強,
特に日本の圧迫は強くなっていく流れの中で、彼らがどう生きていくか、次作を読まないといけないようですね。

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