2012年1月1日日曜日

内田和成 「プロの知的生産術」(PHPビジネス新書)

最近、クラウド・サービスやデジタルグッズを使った、情報のインプットやオウトプットが大流行(おおはやり)なので、そろそろ逆張りのものくるんだろうな、と思っていたところに、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の前代表である著者による本書であった。
ということで、デジタルよりアナログ風味をという趣旨のものなのだが、デジタル嫌いでアナログ大好き、という人より、デジタルやクラウドの世界に鼻の上ぐらいまで浸かっている人に読んでほしい一冊ではある。

構成は

 第1章 「情報整理」では差がつかない時代ー「自分のスタイル」を確立しよう
  1 情報活用のボトルネック
  2 「目的」をもって情報と接する
  3 自分の「立ち位置」を明確にする
  4 「期待役割」を意識する
  コラム 私はなぜ、ガニェットにこだわるのか
 第2章 大事なのは梁ではなく「質」-必要な情報、不要な情報をどう見抜くか
  1 少ない情報で勝負する
  2 「目的」というフィルターで情報を選別する
  3 「差別化」できる情報をいかに手に入れるか?
  コラム プロの出張道具
 第3章 情報を最大限に生かすための「二〇の引き出し」
  コラム デジタルグッズにとことんこだわる
 第4章 デジタルとアナログを使い分ける
  コラム 手書きの情報収集にもこだわりを
 第5章 私の情報源ーメディア、仕事、日常からどう情報を得るか
  1 新聞、雑誌、本、ネットー各種メディアの活用法
  2 「仕事の現場」からどう情報を得るか
  3 もっとも重要な情報は常に「人」から得られる
  4 「キョロキョロする好奇心」で、日常すべてが情報の宝庫に
  コラム パソコンをもっとつかいこなす

ということになっていて、途中、筆者のデジタル・ガジェットについてのコラムがさしはさまれているが、基本的に、デジタルとの親和力は薄くて、クライド・サービス、のどんなものを使うか、というあたりはかなり記述は少ないので、そうしたことを期待して読んではいけない。

むしろ、「情報にアナログを入れる(P145)を主張したい本で、クラウドツールを使いこなしているデジタル派にはあちこち、ガリッとくるところが多いだろう。

ただ、まあ、

ネットの情報は「誰もが知っている情報であることがほとんど」(P192)

とか

ネットの情報だけで、「差別化」を図るのはどうしても難しい(P193)

とか

情報は現場で探すべき・・・やはり、現場でこそ、日々いろいろな事件が起きている(P203)

といったところは、知的作業の大部分をデジタルに預けている人も心しておくべきこと。

ただ、紙ベースの情報整理は、「仕事のやってる感」は半端ではないが、カードを作成したり、ノートにまとめることは、インプットの労力のわりにアウトプットの頻度が少なく、費用対効果が悪すぎる点に限界があるといった点は、最近、小山龍介氏のHACKS本を読んで、鶴見良行氏の情報整理にちょっと感銘を受けている私としては、アウトプットの量にもよるよね、と異論も唱えたくなったりもして、全てについて本書の言うことに頷けないのも本音のところ。

勝手に結論付けて言うと、この時代、デジタルの中で知的作業、インプット、アウトプットの大部分をこなすのが効率的であるのは間違いないところなのだが、あちこち、綻びが生じるのは間違いなくて、その辺をアナログで上手にパッチをあてましょうよ、というところか。

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