2011年5月30日月曜日

成毛 眞 「実践!多読術」(角川ONE テーマ21)

「本は10冊同時に読め!」の続編ともいえる実践的読書術の本。とはいっても、速読や多読の技術論を語る本ではなくて、なぜ多読しなければいけないか、多読を志す心構えはどうか、といったことを熱く折伏してくる本。

例えば

私にとって古書店の存在価値は減ってきた。それは単純な理由からで、新刊本が出るからだ。古書を読んでいる暇がない。(p30)

マーケッターには軍事戦略本が欠かせない(p61)が、経営者は仮説を検証するためのプロセス(自然科学)を体得しておくべき(p71)

といったあたり、ありきたりの書評とはかなり雰囲気が違うのがわかる。
おそらくは、日本マイクロソフトの元社長で、それ以外の会社経営の経験も豊富な筆者の、一種のアクの強さが垣間見えるようで面白い。

さらに、筆者は多読するために書評を書くことを勧めていて(文章もそれなりに上達するし、本の読み方も深くなるからだそう)、その「書評を書くための心構え」は





①書評を書くからといってアンダーラインをひかない。書評とは別に読書記録も書かない。なぜなら読む本の良が減るから
②書評も速報性が命
③ブログの場合、フォーマットを固定する
④ブログで取り上げる本は、バラエティに富ませる

の4つらしい。私の場合、いずれも守れていないような気がする。努力目標として、肝に銘じておくべきか・・・。

それはそれとして

変革は辺境から生まれる。非常識から、次の常識が生まれるのだ。だからこそ経営者は常識を捨て去らなければならない(p88)

といった記述に、心励まされる思いがするのは、ちょっと最近弱気になって、心が定まっていないせいかな。

では、最後に目次を紹介して、この本のレビューはひとまず了としたい。最終章の筆者のお薦め本のリストを手に入れるだけでも、この本を買う価値はあるかも。

第1章 超併読のある生活
 私は、一体どれだけの本を併読しているのか
 まず本をリビングでざっと読み、仕分け作業を行う
 "格好のいい"蔵書棚を作るのが私のライフワーク
 併読のためには、本はさまざまな場所に置く
 私がアマゾンを重宝する理由は配達能力だけ
 理想の書店はどのような書店かと言うと
 電子書籍に関して私が言いたいこと
 これからは成功するかもしれない書店のビジネスモデル

第2章 賢者の読書、愚者の読書
 古典は他人に任せて、新刊を読もう
 ハウツー書や投資本は捨てて経済学に学べ
 自然科学に興じることが何より大切な理由
 ノンフィクションは、イギリスとフランスが抜きん出ている
 今は翻訳がうまくて速い。いい時代だ
 軍事本を使って、合理性と戦略論を学ぶ
 "賢者の読書で準備して、人生のサイコロを振ろう
 "賢者の読者"の四つの効果効能とは

第3章 経営者は自然科学に学べ
 仮説検証は経営の仕事、だから自然科学を学べ
 マーケッターは、把握できないものに手を出すな
 営業部長が歴史読み物に学ぶべき点とは
 日本の軍事記録は人身掌握術を学ぶべき教科書
 理系出身者が重要視される時代は変化の時代だ
 ノンフィクション・ミステリーで、常識を歌学心を養う
 突然ですが、英語力で身につける論理的思考
 悪役の人物伝に学ぶべき点が多い
 バリ島のプールサイドで読む白クマ物語は楽しい
 転勤するのであれば、それこそ時空をずらす読書術を
 コース料理には、前菜や箸休めも必要になる
 "賢者の読書"が夢見る力を与えてくれる好例

第4章 書評の技術
 書評とキュレーター
 書評を書く場合にいくつかの注意点と気構え
 書評をコンスタントに書くための知恵とは
 書評は工芸品、自己満足でマニアックな世界だ

第5章 賢者の蔵書棚をつくろうー厳選ブックガイド

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