2011年5月11日水曜日

池上永一の「テンペスト」読了

池上永一の「テンペスト」を読了した。連休に入ってから読み始めたので、連休中は、これを読みふけっていた状態だ。
詳しい紹介は別に譲って、ざっくりとレビュー。
おおまかに言うと、沖縄の宮廷を舞台にした、立身出世ものというか、成り上がりの物語に名を借りた琉球の王宮が滅びていく歴史ものというか、なんとも複雑な色合いを持つ歴史(時代)小説。
時代は、ちょうど幕末あたり。
さわりのあたりからレビューすると、
琉球の首里の士族の娘に生まれた真鶴は、科試(琉球版科挙)に合格することが一族最大の目標と考えている父親から「人」として扱ってもらえない。「人」どころではなく、「存在しないもの」として扱われている。
ところが、彼女の義理の兄が受験勉強の辛さに耐えかねて失踪。真鶴は兄を救うためと、自ら望みを叶えるため、男に扮し科試の臨む、ってな感じで始まり、孫寧温と名を変えた真鶴は、科試に合格し、琉球王朝の新進官僚としてデビューを果たすが、彼女を待つ嵐の運命は、
ってな感じで展開していく長編小説だ。
その後の展開は波乱万丈、山あり谷あり、はたまた天空あり。いやそれどころか、恋あり、花散る無残あり、あらら、子供まで産んでしまうのか、と作者が次々と繰り出してくる手にうかうかと乗せられながら、最後のページまで引っ張りまわされました。
琉球王府という、ほとんど知識が無く、またそれなりの異国情緒に満ちた舞台ということもあるのだろうが、なんともハラハラ、ドキドキしながら読んでしまった。いや、満足、満足。
さらにいえば、清国と薩摩という二つの宗主国をもつ琉球の姿は、二つの性を演じる真鶴・孫寧温の姿とダブってくる。琉球が、二つの国の間で独立を求めて悪戦苦闘す姿は、二つの性に引き裂かれそうになりながら、自らの思いに忠実に生きようとする主人公の姿でもあって、うーん、なんとも複雑で、琉球らしい絢爛豪華といった読後感である。
ついでに、この話、仲間由紀恵主演で舞台となったり、NHKのBS時代劇となったりで、私の場合、主人公のイメージが、彼女に固定されてしまっている。真鶴や孫寧温の小説内でのしゃべりを、仲間由紀恵の細い声で頭の中で再現したり、といった密かな楽しみもないではない。
TVは7月から放映らしいから、それまでに読んでおくと2倍楽しめるような気がする物語である。

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