同じ筆者の「消える大学、残る大学」と一部重複するところはあるが、今現在では、両書とも、「わかりやすい」大学改革についての著述といえる。
構成は
はじめにー日本の大学の致命的欠陥
第1章 崩れ始めた日本型「大学ビジネス」
第2章 教育力は再生するか?ー脱「旧帝大モデル」という活路
第3章 タイプ別・日本の大学それぞれの「いま」
第4章 受験生はなぜ「大学選び」を謝るのか?
第5章 大学から日本がよみがえる
おわりにーEU「ボローニャ宣言」が示した大学の未来
となっていて、「大学が倒産する」時代が到来していることの警鐘を鳴らすとともに、そうならないための処方箋について述べていくのが本書の主眼。
筆者の目指す大学づくりとは、あえた簡略に言うと中途半端な研究大学になるのではなく、小規模でいいから教育をきちんとする大学になりなさい、ということにつきるのではないか。大学は都会にある必要はない、というところや金沢工大や日本福祉大の実例をあげる時の好意的な記述がそれを推察させる。
私自身、昨年から大学改革に携わらせてもらっているのだが、どうも、大学の教職員が教育に徹底しない地方の小規模大学はうまく行かないことが多いし、地方の小規模大学ほど、教職員が妙に「教育」にこだわっているような気がしてならない。
その一つの象徴が全入時代を明確に意識した「勉強のできない子」を育てられる大学であろう。そして、そうした少子化時代に必死になって対応していこうとする大学の筆者の目は温かい。
ここで、本書の最終章、「第5章 大学から日本がよみがえる」の最後のところを引用して、レビューの締めとしたい。
大学という古い体質の組織体は、・・・自身では本当に変わらない、変わることができないのです。しかし、そういう体質をもった大学界であっても、少子化という環境変化に産業界からの外圧が加わることが、変革に向けた大きな後押しになるのではないか、と私は確信しています。
「大学を変える」ということに対する著者の熱い思いを感じる一節である。
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