2009年6月19日金曜日

樋口泰行「変人力ー人と組織を動かす次世代型リーダーの条件ー」(ダイヤモンド社)

HPの日本法人の社長を経て、ダイエーの再生にかかわり、現在は日本マイクロソフトCOOである筆者の、ダイエーの再生に関わっていた当時を綴った、いわば「会社(職場)をいかに再生するか」の実録である。
 
こうした会社の再生などといった修羅場には、そうそう立ち会えるものではないし、その中でも、「ダイエー」という一世を風靡した企業の再生に関わるといた体験は、誰にでもできるものではない。
また、そうしたプレッシャーとストレスに誰でも耐えられるというものではない。
 
 そうしたことは筆者も
 
再生に求められるリーダーシップは、平時のリーダーシップとは明らかに異なる。調整型や改善型のリーダーシップではなく、目の前のどんな課題をも突破していく変革型のリーダーシップが必要となる。どんな障害があろうとも変化を強力に推進していく、いわば「チェンジ・リーダー」が何より求められる。
揺るぎない軸を持って社内の固定観念を打ち破る力、サムライにも似た気概で修羅場をくぐり抜ける力、熱き言葉で信念を伝え続ける力・・・
 
私はこれらの力を総称して「変人力」と呼んでいる

修羅場のリーダーには、オペレーションの能力以上にエモーショナルな能力が必要だということである。すなわち、周囲が何と言おうとも自分の信念を貫き通す力、底知れない執念で変革をやり遂げる力。いわば「変人力」とでもいうべき力がチェンジ・リーダーに求められているのである。
 
といった表現の中に滲ませていて、こうした体験は万人が対応できる、あるいは処理できるものではないにしろ、こうした経験をくぐってきた人の言葉というのは、通常のビジネスの現場に中でも、ある種希釈した形ではあれ、応用できる場面が多いと思う。
 
 いくつか引用すると
また、リーダーの心得として
 
顧客志向を確立し、それを維持する出発点は、組織を束ねるリーダー自身が軸足をお客様に置くことだ。その上で、現場の「基本動作」を徹底し、お客様の声を反映した打ち手を積極的に実施していくことである。
現場から離れたところで改革をしようとすると、戦略とか戦術とかの大括りの議論に向かいがちだが、実際はそうした議論を行う以前に「やるべきことをやっていない」ところに根本的な問題が潜んでいることが多い。
 
 
リーダーにとっての現場力とは、自分一人で問題解決を図ることにあるのではなく、現場で働く人たちを活性化し、皆の創意を引き出し、現場を方向付けることにある。そのためにも、障害を乗り越えていく自らの背中を見せることが重要なのだ。そして、現場こそがもっとも大切だというメッセージ自らが積極的に発信し続けることが重要なのである
 
といった言葉は、自らの置かれているビジネス環境がどうであれ普遍的な言葉として考えていい。
 
 経営者の毀誉褒貶は、その時々のビジネスの失敗や成功、あるいは、その時代の後押しや企業の勢いといったものに左右されがちだから、このレビュー当時、あるいは2~3年後、10年後に筆者の評価がどうなっているかわからないが、少なくとも、「ダイエーという大企業の再生」という大きな事業に携わった経営者の言葉として、重く記録しておくべきだろう。
 
 一大事業を成し遂げた敬すべき「改革者」の言葉として、
業務柄、「改革」ということに携わる一人として、次の言葉を肝に銘じて、この稿を終わろう。
 

組織の中で改革をやり遂げようとすれば、リーダー自身が一にも二にも、自分ならではの座標軸を持つことが大切である。物事の真実を見極める力、遠くを見通す力を持つことである。そして、王様が立派だと信じ込んでいる社員たちに向かって、「王様は裸だ」と語り続けることである

0 件のコメント:

コメントを投稿