2005年10月29日土曜日

横塚眞己人「西表島 ヤマネコ騒動記」(小学館文庫)

1998年5月1日初版。定価は457円+税だが、古本屋で105円税込みで購入。
脱サラ後のカメラマン生活の第一歩ながら、西表島のヤマネコを撮影するために、西表島に移り住み、ついには西表島を心の故郷にしてしまった横塚さんの数年間にわたる撮影日記。

とはいっても、最初から、ヤマネコをバンバン撮影できた訳ではないらしい。最初の移住の時は、生活資金が尽きて、奥さんにパートにでてもらい、撮影チャンスを狙う。ところが、周りの人からは写真家まがいのヒモに間違えられ、精神面でも疲れて、あえなく撤退。
2回目は、沖縄や西表島のガイドブックの写真撮影という収入源をみつけて資金面は、なんとかクリア。西表島に住居を構え、ヤマネコの撮影に専心するという運び。確かに、2回目の移住からは、筆者も西表島の住人っぽくなっている。
ヤマネコ撮影の努力についても、2回目の方が準備周到な上に念入りで、腰が入っている。1回目は餌付けやテレビクルーとのタイアップといった人頼みっぽいことが目立つのだが、2回目は、森の中に撮影用のテントと自動撮影装置を仕掛けて、森の中に泊り込む毎日である。当然、ムカデの大群に包囲されたり、やち沼のような底なし沼に落ちたり、生命の危険も増す。中でも不気味なのは、戦中に西表島の炭鉱に騙されて連れてこられ不慮の死を遂げた鉱夫たちの霊とも思われる青い玉に遭遇する話。
こうした危険と空振りを積み重ね、やっとのこと、ヤマネコの撮影に成功。どういうわけか1回成功すると、コツでもつかめるのか、撮影のご常連とでもいうべきヤマネコも出現する。
筆者は、この後、ネイチャーカメラマンとして、マレーシア、インドネシアなどのジャングルへ出かけることとなるようだが、きっと、このヤマネコ撮影で密林にとりつかれた、といったところか。
本の中心は、ヤマネコ撮影の様子やらヤマネコの様子の話が当然多いが、南の島の、なんとなくゆったりした暮らしぶりが、そこかしこに散りばめてあり、西表島の滞在記としても楽しい。

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