2005年10月9日日曜日

山田 和 「インドの大道商人」(講談社文庫)

1988年というから、今からほぼ20年前に、インドを旅して、そこの大道商人からのインタビュウと写真をまとめたもの。数年間をかけてインドを旅して、都会ばかりでなく外国人が足を踏み入れることのない地方の村まで、床屋から野菜うり、土器売りなどありとあらゆるインドの大道商人のインタビュウを残した著者の熱意と酔狂さには脱帽。
しかし、いろんな職業があるものである。野菜売りなど日本でもありそうなものから耳掻き屋まで、さすがインドやー、という感じ。
しかも、挿入されている写真のいずれも良い顔をしているものばかり。みんな自分の商売を誇っているんだなーという感じが伝わってくる。紹介されている商売は、インドの街角というか道端でくりひろげられていた商売ばかりなので大儲けできるものではない。インドの人々の日常を支えている身近なものなんだが、みんな明るい、良い顔をしている。特に親父さんやお袋さんの近くにいる子どもたちが良い顔をしている。きっと、親の跡を継いで商売することに疑問はないのだろうなーと感ずる顔である。
本がまとまったのが、1988年で、あとがきにもあるように、インドは、その後、ひどく変貌しているはずである。とりわけ、世界のプログラム工場となって以来、こうした、ある種、平和な大道商人の世界が残っているかどうかはわからない。
しかし。しかしである。きっと広いインドのどこかで、こうした明るい顔をした大道商人が、元気よく商売している姿を望むのは私だけではないはずだ。効率だけを物差しにするのは欧米や日本、韓国(中国はその影響下に入ってしまいつつあるが)だけでよい。効率だけでない尺度の存在を、悠久の大国インドに望むのは我儘だろうか。


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