2005年10月5日水曜日

宮田珠己「旅の理不尽」(ちくま文庫)

現地の人との暖かいふれあいとか、旅で出会う日本とアジアとの違いなど、賢くなることを期待して本書を読んではいけない。

著者の弁によれば、著者は一介のサラリーマンで、夏期休暇や会社員の当然の権利である有給休暇を取得したり、その他当然ではない権利もいろいろ取得したりして、成し遂げた旅の記録であるからだ。

当然、旅先ではいろいろな事件がある。

チップが少ないと、熊を観光客にけしかけるトルコの熊男にには勝っても、みやげ物売りには負けたり、食べかすをはき散らす中国人のまねはするが、ボールいっぱいのウーロン茶に閉口したり、ハノイで地元の美しい女性と交流を広げようと思うが同行者に邪魔されたり、マジックマッシュルームでバッドトリップしたり・・・。

一言でいえば、日本の若い「にーちゃん」のいーかげんな旅行の記録なのである。

しかし、はちゃはちゃ旅行記と割り切れば、結構、面白い。

なにせ、余計な現地の歴史への思いなどはないし、日本の現在へのじゃまくさい思い入れや反省もない。所詮、外国へ頻繁に旅行できるのは、やはり国力があることには間違いないし、豊かであることにはかわりない。
それは、こうして旅をする人々の罪でも功績でもないわけで、彼らは旅をしたいから、当然でない権利も行使して旅をするわけだ。でも最後の香港の女の子とのラブロマンスになりそうで、ならない話は、著者の後悔が随所に滲んでいるようで、悲しくも可笑しい。


ノー天気でも旅行記は旅行記の一冊である。

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