2005年10月5日水曜日

下川裕治「アジアの旅人」(講談社文庫)

下川裕治さんお得意の東南アジア諸国の旅行記、滞在記。この人が東南アジア、特にタイについて書いたものは、東南アジアの川のように、とろりとした雰囲気が漂ってくる。それは、この人が、しっかりとタイの人々や風物への愛情を持っていせいだろう。どこでも寝てしまうリキシャの親父や、混雑がひどいにもかかわらずマイカーを使い続けるタイの人たちへの目線が非常に暖かい。


また、第2章ではタイだけでなく周辺の地域(ラオス、バリなど)についても広げられていく。それぞれに事情は違っているが、やはりそこはアジア。たくましく、そしてどこかルーズなエピソードがあふれている。たくましいといえば、「明日(買う)ね」といった著者に「明日、買うといったじゃないか、さあ買え」とタバコを売りつけてしまうおばさんのたくましさには笑ってしまう。(アラビアでも「ボークラ」(明日)といえばしつこい商人も退散するというのに、ベトナムのおばさんは、それを上回るわけだ。もっとも著者は路上売りの掟破りといっているが)

続く第3章では、アジアにおける牛肉と豚肉と犬肉のうまさの比較、ヤシの木の汁を原材料にした幻の「ヤシ酒」、水害に悩まされながらも水と縁の深いタイの人々の暮らし、そして、日本の中の東南アジアといえる「沖縄」について語られる。

東南アジアの旅行記として、安心して楽しめる一冊。章間のコラムや写真も楽しい。特にチャーハンや麺類などの食べ物の写真は、どれも美味しそうで食べたくなるのは私だけだろうか。

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