2005年10月29日土曜日

塩野七生 「ローマ人の物語 22 危機と克服〔中〕」(新潮文庫)

ネロの死後の3人の頼りにならない皇帝が即位している間、といっても、皇帝ガルバの即位が紀元68年6月で、三人目の皇帝ヴィテリウスの死が紀元69年12月だから、ほんの1年半ぐらいの間、ローマ人の同士討ちに触発されて、ゲルマン、ガリア、ユダヤで氾濫がおきる。

この巻の前半は、この反乱と鎮圧の話。ゲルマン・ガリアの内乱は、かなり大規模でローマもあわや、という側面もあったらしいが、なにやらガリヤ(今のフランス)とゲルマン(今のドイツ)の仲にスキマ風がふいたあたりから、急激に瓦解する。
フランスとドイツが仲が悪いのは近代に入ってからではないらしい。
現代でも、なにかといがみあうのはローマ以来の筋金入りというわけだ。

一方、ユダヤの内乱の方は、かなり長引く上に辛気臭いものがつきまとう。
宗教や、ユダヤ人同士の対立が見え隠れするせいだろうか、ゲルマンの反乱に比べ陰気な反乱。おまけに最後は篭城攻めをされて、あえなく敗北。非戦闘員もたくさん死ぬ、おまけに身内で殺しあう集団自殺のおまけつき。

巻の後半は、皇帝ヴェスパシアヌスの治世。反乱と内乱の後始末といった苦労なこともあったろうに、手堅い政治をしている。
ナンバー2のムキアヌスも有能だったようだが、この人も只者ではなかったようだ。容貌は、まるまっちい、風采のあがらない田舎の親父といったものだったらしいが、外面で人を判断してはならないというローマ帝国時代の見本のような人。

後継者問題、新しい税源問題といった難問を、着実にこなしながら、70歳で没。ローマ帝国時代の徳川家康といったところか。
(まてよ、時代はヴェスパシアヌスの方が古いから逆か・・・)

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