2011年3月31日木曜日

ゲッツ板谷 「ベトナム怪人紀行」(角川文庫)

=この記事は「辺境駐在員のブックレビュー」に掲載(2005.10.8)したものです=


日本の怪人、ゲッツとカモちゃんが、今回はベトナムに挑む。今回の旅の不幸な道連れは

ベトナムで日本のテレビ番組のコーディネートをしている鈴木君。

「タイ紀行」と違い、最初は、耳掃除の心地よさやらフォーやラウ・マム(寄せ鍋)をはじめとするベトナム料理のうまさから始まる。なんか雰囲気違うと思うことしきり。「タイ紀行」ではケンカしてる場面が多かったのだがなー。最後は、絶滅が危惧される手乗り鹿を食する話・・・(やっぱり、ここに落ち着くか)。

料理の話が出てくるのは最後まで一貫している。あちこちでの特色ある料理(中には「犬料理」も含まれるのだが)が紹介され、美味そうに描かれている。


お決まりのオカマの人も登場する。タイといいベトナムといい東南アジアでは、大概の本でオカマが登場するのは何故だろう。今回はやけに純粋で可憐なオカマ少年が登場。
この本のオカマ少年もどことなく寂しげである。

と、しんみりしていたかと思うと、突然、○欲まっさかりみたいなことになるのが、この本のよいところ。ベトナム中部で、一人旅をしている独身日本女性に会った途端、変貌していまうわけだ。まあ、最後は、何もなく別れてしまうのが定番なのだが、妙に、このあたりは文体がはずんでいるのがおかしい。

後は、カブトムシ捕獲で一攫千金を狙う話や「犬料理」の話など。「犬」のハムのは、味は悪くないのだが、「犬」の姿を思い浮かべた途端吐き気がこみ上げたというくだりには、愛玩物としてしか認識できない私たちの限界を思う。

今回は、やはりベトナムということで、ベトナム戦争の負の遺産からは自由になれない。随所にベトナム戦争の枯葉剤の影響がでている子供たちや、負けた側の南ベトナムの兵士の話がでてくる。
さらには、太平洋戦争の時に置き去りにされた日本人だと主張するベトナム人。ところが、途中で、カンボジアのポリ・ポト軍を攻めたフン・セン軍に参加した兵士の話から様相が異なってくる。被侵略者であったベトナムが、解放者という名の侵略者へ変わった話など。随所に、元兵士へのインタビューもあり、要所要所を引き締めている。

全体として、「タイ怪人紀行」に比べ、少し重い。それはベトナム戦争こともあるのだろうが、タイとベトナムの違いも影響しているのかもしれない。

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