2006年1月9日月曜日

文藝春秋編「B級グルメの基礎知識 平成版」(文春文庫ビジュアル版)

リサイクル書店をぶらついていると、文春文庫のB級グルメの本を見つけて購入。
このシリーズが出たときは、もう東京住まいを引き上げて田舎に移り住んでいたから、紹介されている店に頻繁に行くという機会には恵まれなかったが、いくつかの店や、いくつかの東京の街のたたづまいに懐かしさを覚えるとともに、一種の旅本を読むワクワク感があった。

なぜなのかと考えてみると、やはり、「東京」という街によるせいだろう。
日本の首都で一番の人口集積地であるというだけではなく、古くからの歴史を有しているからというだけでもなく、人それぞれに「東京」への思いを抱かせてしまっているということなのかと思う。住んでいる人も、住んだことのある人も、住んだことのない人も、それぞれに「東京」への憧れや郷愁や嫌悪をもってしまっている。それはマスメディアから国のあり方が、この「とうきょう」を中心に回っているということと表裏一体なのだろう。

といった、よちよちした東京評論はひとまず置いておいて、この本のレビュー。

まず最初は、「豚肉の生姜焼き」からドーンと始まる。
こうしたビジュアル本の醍醐味なのだが、掲載されている食べ物の写真の数と迫力なのだが、ジューシーな生姜焼きの皿の数々が、どんどんと載っている。

生姜焼きの後は、ヨコハマ、中華街、神楽坂などなど、舶来の味から下町の味までいろいろ。西日本の住んでいる管理人には神戸の南京町の方が身近なのだが、中華街というと横浜の方を連想してしまうのは、これらのB級グルメ本に影響されているところが大きい。
面妖な中華街グッズもしっかり紹介されているのがうれしい(特に中国製缶詰なんかは怪しくてよいなー)



途中でB級グルメはなぜ東京(しかも東東京中心に)と横浜中心の記事が多いかの答えになりそうな一節をみつけたので引用。

「江戸は維新で薩長に乗っとられ、さらに西洋の味の激突を受けた。一時にダブルパンチを受けた都市は希である。食の文化を含む生活の習慣と常識が、すべてくつがえされた。大阪はいまだに郷土の味をもっているが、東京は喪失させられた。・・・そんな不条理の克服から東京風の気負いが生まれた。心で泣きながら無理を通して、エイッ、と気合いを入れてみんなで食べたのが東京のB級食である。・・・B級グルメとは旨味だけで語れない東京の傷の味だ」

うーん、たしかに、東京の食文化は維新、戦後で分断されているよなーと納得。B級グルメも深いのだなー、と感心。(やたら江戸文化の華とか下町、下町ばかりを強調するグルメ本も多いけどね)

最後にB級グルメ本らしく、正しい(?)「生姜焼き定食の食べ方」を紹介

「まずは一口分を切り残しておこう。その一切れは、キャベツにタレがしみるまでの"待ち時間"に味わう貴重な存在なのである。そして、あとの肉は全部キャベツの上に乗せてしまい、これを箸でジュワジュワと三回押さえつけておくのだ。

・・・

まずは、切り分けておいた一切れを口にポイ。弾力のある脂身を噛みしめ、おちついて充分咀しゃくしよう。とろける脂身のまろやかさが存在感のある甘辛タレと溶け合って、口の中いっぱいに旨さがジュワーッと広がっていく。」

どうです。涎がでてきませんか。

このあとタレのしみたキャベツ、肉本体、ポテサラとつづくのだが、詳細は原本でどうぞ。


このシリーズには、このほかに「B級東京グルメ」とか「B級グルメの東京一番しぼり」とかがあるし、鮨本とかもでていたように思う。こういうグルメ本は読み出すと癖になるんだよねー。

0 件のコメント:

コメントを投稿