美崎栄一郎 「「結果を出す人」の手帳の秘密」(日本経済新聞出版社)

2012年1月7日土曜日

ノート術

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「「結果を出す人」はノートに何を書いているのか」などの著作で有名な美崎栄一郎氏の「手帳」に関する本、と思いきや、ビジネスに対する取り組み手法、全体効率をどうあげるか、といったことについてのビジネス本。以前の個人的なスキル重視の感じから、かなり全体志向、チーム志向になっている感じがします。もっとも「手帳の秘密」とはあるが、手帳の手帳のスタイルとか、手帳の記入の仕方、使い方といったことが紹介されている本ではない。

本書の主張は初めのあたりのページで

手帳に秘密があるわけではなく、時間に関する考え方のところに秘密がある



大事なことは、その手帳に書く内容の時間の調整の仕方、スケジューリングの仕方、実際に実行する時の思考方法

といったところに端的に現れているように、テクニックというより、ビジネスに向かい合う思考方法についての本というべきだろう。

構成は

第1章 時間に対する考え方
第2章 時間に投資する
第3章 仕事時間をどう活かすか
第4章 移動時間の活かし方
第5章 プライベートの時間の活かし方

となっていて、

道具を探す場合は「自分に必要なことを絞り込むことによって時を有効に使える」(P93)

とか

仕事は段取りが8割なのだから「自分自身で下準備するのもいいですが、前にそれをやったことがある人に聞く、という方法もあります。そうすると時間がすごく短縮されるのです」(P102)



「ごっちゃんゴール」のためにスケジュールを空けておく(P120)

といった個人のスキルを上げるノウハウももちろん掲載されているのだが、本書で特徴的なのは、筆者の過去の著作である「「結果を出す人」はノートに何を書いているのか」などで顕著だった、個人のスキルをあげていくことが、すなわち仕事の効率化と成果に結びつくんだという感じが強かったのが、チームとしての活動や全体としての成果の問題や、ビジネスとプライベートの関係に力点を移してきていることだろう。

それは

仕事はドリブルでなくパスで回す。早く仕事を終えるには自分がドリブルする時間が長いとだめ(P45)

とか

能力があってもやる気がなければ、結局時間がかかることになるのです。ヤル気のある人にやってもらうことが、時間をいちばんうまく使うことになります。(P132)



プロジェクトの成功はプロジェクトリーダーのやる気で決まる(P135)

といったところとか、飲み会があった時は2次会まで参加する、とか空いている時間をやる気を生みための時間にすることに時間と気をつかうことがリーダーの役割、といったあたりに現れている。

これは、小山龍介・原尻淳一氏の「IDEA HACKS 2.0」と共通することのように思え、東北大震災がビジネススタイルに与え始めた影響と思う。

あれ以後、私たちは個人のパフォーマンスをあげることでは解決できないチーム力、あるいは協力し合ってのプロジェクトの遂行のパフォ
ーマンスをどうあげるか、といったことをビジネスモデルの中心の一つとして意識しなければならなくっているのだろう。

手帳術やノート術といったテクニックの話ではなく、ビジネスへの向き合い方とか時間管理の思考方法とか、ちょっと理念的なところで自分の方法論を検証したい人にお奨めな一冊である。

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