2011年9月25日日曜日

星野之宣 「宗像教授異考録 2」(小学館 ビッグコミックススペシャル)

異端の民俗学者 宗像伝奇(むなかたただくす)が歴史の隠された謎を暴く「宗像教授シリーズ」season2の第2集

収録は

第1話 花咲爺の犬
第2話 割られた鏡
第3話 織女と牽牛

まず1話目の「花咲爺の犬」はおなじみ「花咲爺」の民話に秘められた縄文人と弥生人の「犬」観の違いが興味深く読める話。花咲爺の民話が広く語られるようになった根底に、犬の埋葬に見る縄文→弥生→→鎌倉を経て、戦国時代の愛玩犬の流行、そして徳川綱吉の生類憐れみの令までの、「犬」に対する感情の変化があるとするのは、ちょっと面白い発想。本編の物語は、このあたりとはあまり関係なくて、幼い頃に拾われてきた子犬とともに育った子供が成長につれ、「犬離れ」する。再び会ったときは、その犬の最期の時なのだが、犬は彼女のために・・・、といった「三丁目の夕日」でもありそうなお話

二つ目の「割られた鏡」はうってかわって、正調の「邪馬台国論争」の話。邪馬台国論争では、よく卑弥呼の鏡の所在が語られるのだが、その鏡の所在に、マスコミで持てはやされている考古学教授がからむのだが、実は、その鏡は・・・、といったことが発端。邪馬台国は畿内にあったのか、それとも九州かといったところの宗像の見解は本書を読んでほしいのだが、卑弥呼の鏡が見つからない訳の推理は秀逸。ヒントは、鏡は、姿を映した本人を象徴する、といったところか。もっと言えば、それを完全な形で残すということは・・というあたり。


最後の話は、珍しくヨーロッパからの留学生が登場。おまけに宗像の私設助手となっている姪の瀧ちゃんとのなんとも淡い恋愛沙汰もあったりして、本筋以外にもそのあたりが楽しめる。本編の謎解きは、七夕伝説と日本神話のスサノオが高天原で大暴れしたところとの関係性をメインにしながら、留学生のギリシア神話のミノタウロスとの相関性をめぐって、宗像と彼が大対立といった形で進行。宗像の隠し子疑惑も途中でてくるあたりが、このシリーズらしくなくてご愛嬌。

この巻は、最後の話がギリシア神話に亜半紙が及ぶが、最初の二つの話は、星野之宣が「ヤマタイカ」以来お得意とする、「縄文と弥生」「九州と大和」の話。筆者の手にのって、うかうかと楽しむのが一番良いのではなかろうか。

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