本書はディズニーという、遊園地として一流である上に、バリバリ、アメリカの企業で、従業員、しかもアルバイトを、どう教育し、どうビジネスの中で戦力としてしっかり使うか、を教えてくれる本であるのだが、質は、そのやり方とというのは、王道中の王道で、基本をきちんとやっていくというあたりが、ちょっと意外でもあり、日本的なメンタリティを持っている私としては安心をするところ。
目次は
Chapter1 育てる前に教える側の「足場」を固める
ディズニーが考える理想の上司・先輩とは/「教える喜び」を感じないと後輩は育たない/自分が扱われたように、後輩は人を扱う/「見て覚えろ」では後輩は育たない/ミッションを正しく理解し、後輩に伝える/行動指針をもち、有線順位をはっきりさせる
Chapter2 後輩との信頼関係を築く
リーダーシップをもって後輩と接する/後輩に「いつも見てくれている」と意識させる/何か感じたら、すぐに「声をかける」/仕事の成果だけに注目しない/間違った考えに染まった後輩を変える
Chapter3 後輩のコミュニケーション能力を高める
後輩の"存在"を認める/後輩に、常に思いやりをもって行動させる/価値観を共有する/後輩との面談・話し合いは、ここに要注意/後輩の状態に合わせて対応を変える
Chapter4 後輩のモチベーションを高める
笑顔のあふれる職場をつくる/仕事の重要性を認識させる/「誇り」をもてる環境をつくる/指示するときは、必ず「理由」も伝える/後輩によい点を見出せば、すぐにほめる
Chapter5 後輩の自立心・主体性を育てる
後輩に自信を持たせる/後輩に「スモールステップ」をもたせる/後輩に自立のチャンスを与える
で、この本のアルバイト(従業員。なにせ、ディズニーのアルバイトは18,000人ということだから、そんじょそこらの会社の正社員より多いよな)を教育する上での基本は、上司、先輩がミッションをきちんと認識して後輩に伝え、行動指針ををもち、優先順位をはっきりさせる、といったことを丁寧に、根気よく、繰り返し教え、ディズニーに対する忠誠心というか同士としての精神をつくっていく、ということになろうか。
これを聞いただけでは、また、あのアメリカ流の社員管理術あるいは組織運営術かよ、と思うところだが、このやり方を進める上の随所随所に、人と人とのスキンシップ、「自主的・主体的に相手を思いやる」ホスピタリティがはめこまれているのがディズニー流ということなのだろう。
たしかに、従業員の大半をアルバイトが占めるであろうディズニーでは、価値観や職場に対する意識もまちまちであろうから、一人ひとりをつなげていく術は、マメに声をかけ、価値観を共有していく人間的な関わりあい(本書のP119では「ストローク」といっているが)がもっとも効果的なのだろうと思う。そうしたことが、「カヌー探検」や「コンタクトレンズ捜索」のエピソードや、電車でディズニーの仕事について喋っている筆者を注意するアルバイトの女の子(ディズニーのキャストは、ゲストになるであろう人の夢を壊さないため、ディズニーのバックステージや仕事の話を公の場では慎むことになっているそう)、バックステージの様子が客に見えると「ショーのクオリティが下がる」と憤慨する一般のスタッフなどの姿に現れているのだろう。
職員、従業員の教育というと、ともするとテクニック論に頼ってしまうところがなきにしもあらずなのだが、天下のディズニーで、こうした一種泥臭い社員(アルバイト教育)が主流を占めているということは、基本の基本、会社と社員の精神的なつながり方、紐帯がどこまで形成できるか、の重要性を改めて教えてくれるのではなかろうか。
本書の細かなところは、「読書メモ」の形にでもして紹介しようと思うが、肩肘はらずに、社員教育、職場の組織づくりの基本を教えてくれる一冊である。
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