2011年9月25日日曜日

星野之宣 「宗像教授異考録 3」(小学館 ビッグコミックススペシャル)

宗像教授異考録シリーズもいよいよ三作目

収録は

第1話 人穴
第2話 鬼の来た道
第3話 神在月

簡単にレビューすると

まず第1話の「人穴」は長野県の洞窟で発見された蛇体の神像の調査に赴いた宗像が、忌部神奈に出会うところから始まる。当然、いろんなトラブルというかアクシデントをもたらす彼女の登場なので、通常の遺跡調査に終わらないのは想像のとおり。今回は、実在のIT界の革命児を模した網野富倍という人物をトリックスターとして物語が展開。三人が地底の穴に落ちたところから、甲賀三郎伝説、あるいは徳川家康の伊賀越えの話に展開が及んでいく。蛇神像が出てきたり小道具はおどろおどろしいが、本質のところは歴史の謎解きアクション(インディジョーンズみたいなもの?)かな


二つ目の「鬼の来た道」は宗像が学生時代の旧友で、今は歴史ノンフィクション作家になっている若緒と福井県で再会するところから事件が始まる。といっても本来の目的は、日本書紀に登場する「ツヌガアラシト」あるいは鬼、「物部」氏の調査。そのため「鬼狂い神事」を探りにいくあたりで、山深い山村に入り込み、といったところから、いつもの怪しいゾーンに突入。製鉄を生業としていた物部の子孫が、山中で鉄資源を探りながら渡り歩く姿や、製鉄のため激しい音と炎の中で裸で作業する姿が「鬼」の機嫌となっていったのでは、という話のあたりにふむふむと頷かせながら、突然、古代の秘事にもっていく手腕はさすが。

三作目の「神在月」は、日本古代史ではおなじみの舞台「出雲」である。島根の歴史文化館で開催される古代史のシンポジウムに招かれた宗像と忌部神奈が出会う、古の「出雲退社」。それは単なる神道の神社なのか、それとも、巨木遺跡をもつ「縄文」の何らかの意思をあらわした物だったのか?といった感じですかね。この話の狂言廻しを務める「古代史の権威」たちがなんとも神々しくて独特の味わいを醸し出している。

第1作、第2作とヨーロッパやインドの話も混じったグローバルなところがあったのだが、今回は、どちらかというと国内シリーズ。どちらが良いかは好み次第だろう
ただ、ヤマタイカ以降、「縄文」を扱うときの筆者の筆の冴えは、他の作者の追随を許さないように思う。以前と変わらない星野ワールドを堪能してみてはどうだろうか。

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