2011年9月23日金曜日

星野之宣 「宗像教授異考録 1」(小学館 ビッグコミックススペシャル)

日本の歴史を斬新な角度から読み解き。一種爽快ともいえる新たな解釈を与えてきた、宗像教授伝奇考」の次シリーズ

収録は

第1話 巫女の血脈
第2話 百足と龍
第3話 天平のメリークリスマス
第4話 大天竺鶏足記

の四話

コミックの筋立てを事細かにレビューするのは、これからの読者に興ざめだろうから、ざっくりとしたところをレビュー

「巫女の血脈」は、東北のイタコがテーマ。宗像の教え子が青森から出てくる。どうやら彼女は夫と死別したらしく、その死別もなにやら訳ありの様子。で、宗像は、土面をはじめとする縄文の文化を調べるため、青森に出かけ・・、といった展開。彼女が過去の呪縛からの解放とイタコのインタビューをメインの軸にしながら、縄文の土偶、特に遮光式土偶の謎に及ぶ話。イタコの話が近代の日本の歴史をなぞりながら、古代の悲しみにもオーバーラップするところが物悲しい。


「百足と龍」は、いってみれば宝探し奇譚のようなもの。田原藤太の百足退治の話を発端にしながら、戦国時代の金山の採掘跡を舞台にした、武田信玄の埋蔵金探しの話。この話では狂言廻しともいえる忌部捷一郎が登場。最後のほうで、武田信玄の軍師 山本勘助の意外な正体に及ぶが果たして真実はいかに

「天平のメリークリスマス」の舞台は群馬県。この話で、今後、このシリーズで宗像の、ある意味、大事な相方ともいえる忌部神奈が登場。美人の考古学者だ。で、話のほうはこの地を8世紀初め頃治めていた「羊太夫」という渡来人らしい人物の話から、聖徳太子へとつなげていく。日本へのキリスト教の伝播への考察も絡んできて謎ときとしてはかなり秀逸。

「天竺鶏足記」は文字通りインドが舞台。お寺さんの団体に随行した宗像が出会う、仏陀入滅後、56億7千万年後に現れて衆生を救うといわれている弥勒に関する話。仏陀の高弟 マハーカッサバが入定したのが鶏足山、弥勒が現れるといわれるのが鶏頭山。さて、その関係性は、ということで、古代の化石が絡んできて面白いが、ちょっと乱暴な筋立て。

このシリーズ「伝奇考」の頃から、その伝奇性が魅力。真偽は別として、古代史のロマンにひたってみるにはお勧め。

紙の本以外にもebookjapanで電子書籍にもなっているので、タブレットをお持ちの方はそちらも良いかも。自炊した場合よりも画面はクリアなので私は結構愛用しております。

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