2009年7月9日木曜日

堀内都喜子「フィンランド 豊かさのメソッド」(集英社新書)

OECDの学力調査で、毎年良い成績をあげたり、世界経済フォーラムの国際競争力ランキングで、何度も一位になるなど、ちょっと閉塞していた日本と引き比べて、羨望といりまじたた注目を浴びている(いた?)フィンランドの体験記。

著者は、現地のユヴァスキュラ大学院大学に留学して、そこの修士号を取得しているほか、フィンランド系企業でも勤務している経歴の持ち主である。

章立ては

第1章 不思議でとても豊かな国~失業率二〇パーセントから国際競争力一位へ
第2章 学力一位のフィンランド方式~できない子は作らない
第3章 税金で支えられた手厚い社会~独立心が旺盛でたくましい女性
第4章 日本と似ている?フィンランド文化~異文化コミュニケーション

となっていて、教育から社会福祉などなどフィンランドの特徴のエッセンスみたいな構成。

管理人のごく狭い見識だとフィンランドで思い浮かぶのは「ノキア」と「親日家が多い」や「サウナ」といったようなことしかなくて、正直のところ、印象は薄い。


失業率は2006年の統計では7.7%となっているので、本書で掲げられている数字よりは低いが、日本に比べて高い(日本は今のどん底状態でも完全失業率は5.5%だ)し、新卒の採用といった形式はない、同じ業務でいる限りはベースアップはない、社会保障は手厚いが税金はとても高い、など日本とは環境的に異なっている国であることは間違いない。

で、最近「フィンランドでは」とか「フィンランドに見習って」といった話をよく聞くのだが、こうした国勢や国柄の違いといったものを、きちんと底に置いた上で議論すべきだろうな、と思う。

例えば、フィンランドの教員の質のレベルの高さが賞賛されるが、現在の日本の教員のレベルの責任は国家だけでなく、保護者と教員自身も負うべきであるし、育児面での支援の厚さは、いわゆる婚外子の養育の問題と、離婚の問題、そして支援を維持する税金負担の問題を同時に議論すべきだと思う。


と、フィンランド全てよしみたいな風潮に、ささやかな竿をさしてみたわけだが、社会に出ても大学の課程に学んでスキルアップに勉める勤勉性とか、自宅もDIYやリフォームが大好きとか、見習うべき、あるいは楽しそうなこともたくさんあるので、そのあたりはモノによってこちら側で選択すればよいことなのではあるが・・・。


まあ、こうした海外留学モノとか外国紹介モノは、ともすれば、そこの国にべったりしてしまって、その国の価値観が世の中で一番優れているみたいなノリになってしまうものが多いのだが、幸いなことに本書は、そうした弊に陥っていないので、あまりアレルギーなしに読むことが出来る一冊ではある。「フィンランド」が気になったら手にとっても良い本である。

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