2011年7月23日土曜日

村上もとか 「JIN-仁ー」(集英社文庫)全13巻 読了

テレビドラマでもおなじみの「JIN-仁ー」を読了した。
今更ながらの筋立ては、現代(2000年)の脳外科医が、身元不明の患者と病院内でもみ合っているうちに転落し、幕末の江戸時代へタイムスリップ。
そこで、旗本の橘家の厄介になりながら、医院を開き、そのうち、坂本龍馬や勝海舟、西郷隆盛、さらには和宮や徳川慶喜などなどの幕末を動かしていた人物たちと知り合いになり、そして・・・、てな感じの、乱暴な表現でいえば、幕末医療大アクションものといっていいのだが、その本質は、現代の遅すぎた青年(なにせ、南方仁先生は30代の後半、40歳になろうかという歳だ)の、江戸時代を舞台にした自らの居場所を見つけ出す成長物語といったところにあると思っている。
医師の腕は立つが、なんとなく心もとない感じのする彼が、橘咲に出会い、幕末の傑物たちと出会う中で、医術を通じて、彼も、時代に影響を及ぼし、時代を回転させていく姿は、一種の爽快感を与えるのである。
そして、こうしたタイムスリップものの最大の課題は、タイムスリップに伴う過去の変更といったことを、どう処理して物語を閉じるか、といったところなのだが、その点も、この「JIN-仁ー」は、余韻のある、巧い処理をしており、筆者の手腕はさすがというべき。
タイムスリップものといえば、SF小説では、かなり書かれているネタで、ハインラインの「夏の扉」や、日本では半村良の「戦国自衛隊」など秀作といっていいものが数多く書かれているのだが、この「JIN-仁ー」も、その一つにリストアップしてよいのではなかろうか。

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