2007年6月24日日曜日

野村 進「千年、働いてきました」(角川oneテーマ21)

日本の老舗企業のルポ。
 
あらためて、日本が手仕事の国、職人の国、製造業の国であることを知る一冊である。
筆者が書中で「商人のアジア」と「職人のアジア」という言葉を使っていて、中国や韓国、東南アジア諸国が「商人のアジア」に属する一方で、日本はアジアで唯一といってもよい「職人のアジア」だといっているあたり、なんとなく感覚で共感するところが多い。
 
かの地を旅して思う、なんとはなしのキツさというか厳しさは、こうしたあたりにも起因しているのかもしれないなーと思ってしまう。
 
本書で、取り上げられている老舗はアトピー性皮膚炎の治療薬を開発した「造り酒屋」であったり、コピーのトナーを製造する「木ロウ製造業」であったり、トレハロースを開発した水飴屋さんであったり、もともとの生業も、新たに進出した分野もさまざまなのだが、共通するのは、老舗ならではの業界通の知識を生かした上での、新展開ということだろう。
 
で、こうした老舗企業が元気よく活動している、それも複数といったところが、日本の中小企業の元気さ(業績の元気さというよりは、気概としての元気さ)を表しているように思う。
一方で、こうした老舗の製造業の活躍に思わず共感してしまう自身の感情を考えると、日本人の遺伝子の中に組み込まれた「製造業」の大きさというものも感じてしまい、日本の産業構造が「製造業」を中心に語られるのも無理ないかもしれないと思う。
 

自分の意識の中の「職人」志向に思わず気づかされてしまった一冊でありました。

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