2012年12月16日日曜日

ダニエル・ピンク「フリーエージェント社会の到来」

最近は下火傾向にあるのかもしれないが、賛成から反対、あるいは無関心まで、幅広い振れ方で議論されている「ノマド論」なのだが、本書においてかなりの部分は語られているといっていい。個人的な見解をあえていえば、様々なノマド本を読むならば、まず最初に本書を読んでからかかったほうが、俯瞰的な立ち位置が確保できると思う。
 
構成は
 
第Ⅰ部 フリーエージェント時代の幕開け
 第1章 組織人間の時代の終わり
 第2章 3300万人のフリーエージェントたち
 第3章 デジタルマルクス主義の登場
 
第Ⅱ部 働き方の新たな常識
 第4章 新しい労働倫理
 第5章 仕事のポートフォリオと分散投資
 第6章 仕事と時間の曖昧な関係
 
第Ⅲ部 組織に縛られない生き方
 第7章 人と人との新しい結びつき
 第8章 互恵的な利他主義
 第9章 オフィスに変わる「第三の場所」
 第10章 仲介業者、エージェント、コーチ
 第11章 「自分サイズ」のライフスタイル
 
第Ⅳ部 フリーエージェントを妨げるもの
 第12章 古い制度と現実のギャップ
 第13章 万年臨時社員と新しい労働環境
 
第Ⅴ部
 第14章 リタイヤからeリタイヤへ
 第15章 テイラーメイド主義の教育
 第16章 生活空間と仕事場の穏やかな融合
 第17章 個人が株式を発行する
 第18章 ジャストタイム政治
 第19章 ビジネス、キャリア、コミュニティーの未来像
 
 
となっていて、本書を読んでから、日本のノマド論を見ると、組織への帰属の問題と仕事の場所の議論にこだわりすぎているような気がしてくる。その点、組織への帰属や縛りが日本に比べて緩やかなアメリカを基礎におく本書の議論は、組織への帰属から解き放たれた時における人と人とのすながりやコミュニケーションをどうととるか、といった点や、単にスタバでMAC airを広げていたらノマド的働き方だといった浅薄な話ではなく、ホームオフィスを含めた仕事の場所のあり方が論じられるあたり、かなり深い議論がされているような気がする。
 
第Ⅰ部から第Ⅲ部までが多くのノマド論、ノマド本で語られる、ビジネススタイルの変化、あるいはそれに起因するライフスタイルの変化(例えば、決まった仕事場をもたなくなる、フリーになるといったことだ)について語られるのだが、さらに、本書のすごいところは、そこからさらに踏み込んで、第Ⅳ部でノマド型のワークスタイルがもたらす新たな貧困の出現であるし、第Ⅴ部で語られる、ノマドあるいはフリーエージェント型の社会がもたらすビジネスにおける資金調達の方法であり、政治のスタイルの変化であろう。
 
 
まあ、読んだから、どう、ということもないのだが、ノマドについて何か思うところある人は、2002年という少し刊行が古い本ではあるが、賛成派も反対派も読んでおいて損はないと思う一冊である。

 

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