2008年7月20日日曜日

宋 文州「仕事ができない人は話も長い」(日経BP出版センター)

元ソフトブレーンの創業者で、辛口の経済評論の宋 文州さんのメルマガをまとめた著作。
 
宋さんのコラムはNikkeiBPにも以前連載されていて(「宋文州の傍目八目」)、まだいくつかは読めるので、興味ある人は読んでみるとよい。
著者は名前で推測できるように、中国籍で、日本に留学したのが縁で、日本でビジネスを始められたのだが、その経歴と日本人の思考スタイルにどっぷりと浸かっていない、そのくせ日本人の思考スタイルを、どうかすると普通の日本人より理解している評論は、辛口ながら教務深く読める。
 
本書は、2004年から2006年までのメルマガをまとめたもので、宋氏自身もソフトブレーンの取締役を辞任したりしているのだが、世間ではホリエモンや村上氏などのネットバブルを謳歌した人たちが凋落した時と重なっていて、日本のネットバブルのまっただ中にいた人の証言禄として読んでも面白い。
 
で、いくつか印象に残ったフレーズを引用すると
 
「我々が他人に言われるから努力するケースは、ほとんどない。努力したい時に努力しているだけである。努力したくなるような環境をつくることが、上司や親ができるせいぜいの「努力」である
 
とか
 
他人がまだやったことのない新しいことをやり出すとき、いくら正しいこと、価値のあることであっても、すぐ理解される保証はない。初期段階ではむしろ誤解されたり、白い目で見られてりすることもよくある。開拓精神やベンチャー精神といえば聞こえはいいが、実行する人には大変な信念と勇気と忍耐が必要である。
 
新人のゴミ拾いと大声挨拶はこのためにある。正しいことだが、恥ずかしいし、泥臭い。それを抵抗なく実行してしまうのは、ベンチャー精神であり、引っ込んでしまうのは大手病である。
 
とか
 
いわゆる「統制」がとれている会社や、「戦闘力」あある会社ほど選択肢と柔軟性がない。そんな会社は変化した社会に適応できなくなるとトップが焦ってくる。「変化!変化!」といくら呼びかけても変化できない。社員の多様な選択肢を許し育てない組織の脆さである。
 
などなど。
 
ベンチャー企業の経営者らしく、変化と多様性に信頼を寄せている論調で、閉塞感のある時のビジネス書として読めば元気が出る。
 
最後に、この人の人生へのスタンスを最も現しているな、ともった一文を紹介してレビューの〆としよう。
 

「群れない。こびを売らない。傲慢にもならない。しっかり自己を持つ」

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