ノマド論争が一頃大流行りしたのだが、どうも本書をその関連性でとりあげるのが嫌であった。
というのも前者がともすれば「組織への帰属論」にあけくれしているように思えたのに対し、この「リモートワーク」は、より良い人材を集めて、効率的に仕事をするのに集合的なオフィスワークは必要か、ということを、よりプラグマティックに論じたものに思えていたからだ。
それは本書の構成でみてとれて、構成が
イントロダクションーオフィスのない世界
リモートワークの時代がやってきた
リモートワークの誤解を解く
リモートのコラボレーション術
リモートワークの落とし穴
リモート時代の人材採用
リモート時代のマネジメント
リモートワーカーの仕事スタイル
となっていて、オフィスの必要性を問う最初のイントロダクション以外はリモートワークをどう実現するか、あい路はなにか、といったところが中心となっている。
本書で主張されているように、仕事が集まってでないとやれないというのはちょっと幻想に近いのだが、「リモートワークをうまく運営するコツは、孤独にいかに陥らせず組織として動いているなのだ(リモートワークのコラボレーション術、リモートワークの落とし穴)」というあたり、リモートワークを地理的に離れ、時間的に分散した優秀なワーカーをいかに集め、いかに集中させて仕事をさせるかという文脈で考えないといけないし、リモートワークをライフスタイル論と切り離すことによって、より多様な人材を、より効率的に使う技術論として考える可能性もあるように思う。
かなり以前から新しいワークスタイルとして注目されているリモートワーク、ノマドワークのスタイル(ここではライフスタイルとしてのそれではなく、ワーキングスタイルとしてのそれね)なのだが、なかなか主流になっていかないのは、当然、工場とか試験検査とか「現場」でないと無理な仕事があるのもちちろんなのだが、性向として「孤独」ではなく「集団」での行動が好ましいと思う生物学的な性向が起因しているのかも、と思う次第で、とりわけ欧米人より集団志向の強いと言われている日本人は苦手とするところなのかもしれない。
しかし、基本的に距離的に離れていても、擬似的な「集団」、「組織化」を行うことは今の技術をもってすれば可能と思うし、人の居住の「集中化」を避け「分散化」を模索していくことが日本が都市国家としてではなくエリア的な国家として存続していくための必須のように思う。
とりわけ、これから少子高齢化が進み、高齢者、介護をする女性などなど様々な環境をもつ人材をいかに活用するか、ということが課題となってくる今後の日本で、労働集約的、集合労働的なワークスタイルでなく新しい可能性を探っていくことが必須となっていくと思うのだがどうだろうか。
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