2012年7月16日月曜日

吉川良三「サムスンの決定はなぜ世界一速いのか」(角川oneテーマ21)

今、アジアで最も元気が良いと言っていい「サムスン」のビジネスのハウツーを語ってくれる新書。

筆者は、日本鋼管でCADの構築に携わっている過程で、サムスンの会長からサムスン・グループの改革に参画するよう誘われ、都合10年余に渡って参画した人。こうした話になると、なぜ自分が見出されたかとか、サムスンの会長の日地となりなりを語る部分が大半を占めてくるのがこうした本の通例なのだが、技術屋としての性格が強いのか、サムスンの経営改革についての記述が大半を占めているのは、本書の良きところ。

構成は、

序章 「意思決定の速さ」がなければ生き残れない時代
第一章 決定のスピードと情報管理でビジネスを制する!
第二章 サムスンはこうして世界を制した
第三章 危機におけるリーダーと組織の役割
第四章 グローバル時代の「ものづくり」
第五章 これから日本はどこへ向かうべきか

となっていて、「パルリ」「パルリ」が口癖の韓国人の性急なところがサムスンの成功譚の大きな部分を占めているのかもしれないが、あのAppleに伍して世界で戦ってるサムスンの凄さは、我々日本人は心から敬すべきだろう。

と言うのも、本書で紹介されうサムスンの経営改革の成功譚は、けして度外れて以外なものではなく、むしろ今の基本を押さえた、しかも、ごく実直に押さえたものであるあたりに、サムスンの凄さを感じてしまうのである。

例えば

「品質というのはお客さんがそれぞれ判断すること」(P72)



「相手の文化を知らなければ売れる商品は作れない」(P88)

といったことをサムスンが社是としているとなれば、日本企業の凋落は時代の変化というよりも変化を高をくくって把握しようとしていなかった傲慢さのあるのではないか、とすら思ってしまうのである。

まあ、企業社会の競争環境に身をおいていない当方としては、あまり極端なことはいえないところなのだが、IMF危機は、やはり、貧乏は人を育てる、というか家貧しゅうして孝子出ず、といった状態を韓国に作りだしたというべきだろう。

さて、リーマンショックを経て、わが国の企業社会の逞しい復活を望みたいところなのだが・・

<2019.03.12追記>

パク・クネ政権のときの汚職騒動も含め、韓国の財閥にはかなりミソがついた感じであるとともに、中国系企業の追い上げでサムスン自体もなかなか経営環境は厳しいようで、ビジネスの世界の栄華盛衰を感じさせる。

その意味で、特定の企業にピタッと張り付くようなビジネス書の論評は難しいな、と感じる次第。もっと「普遍的」なものを抜き出すようなレビューを今後心がけます。

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