2008年8月7日木曜日

梅田望夫「ウェブ時代 五つの定理」(文芸春秋)

おなじみの経営コンサルタントというか、ウェブ時代の適切な水先案内人である梅田望夫さんが、シリコンバレーの第一級のビジョナリーたちの言葉を紹介しながら、ウェブ時代の新しい作法や起業の道案内をしてくれるのが本書である。

ビジョナリーとは、テクノロジー業界の最先端を走る起業家や投資家、「普通の人」よりも何歩も先を行く天才的技術者、日々の濃密な経験から世界を俯瞰して眺めている企業経営者、複数の専門性を極めた大学教授といった人たちの中で、とりわけ言語表現能力が高い人々のことで、こうした人々が英語で発する切れ味の良い言葉を読み、その言葉の背景にある思考や発想に寄り添って深く考えることで、

未来を見通すことなど誰にもできないが、こうすればクリアに想像できる

世界の成り立ちなど誰にもわからないけれど、こうすれば見晴らしがよくなる

といったことができると発見し、それを繰り返すことで、変化の予兆を捉えるというのが、筆者の勉強法のようだ。


もとより英語力のない私なぞには、及びもつかないが、こうした先達の言葉を紹介し、その意味と示す未来を魅せてくれる本書のような存在は非常にありがたい。


そしてこうしたビジョナリーの言葉は「五つの定理」として整理され、それぞれのテーマ毎に分類・整理され、構造化されている。

「五つの定理」とは
①アントレプレナーシップ
②チーム力
③技術者の眼
④グーグリネス
⑤大人の流儀

で、いずれも、こうした「ウェブ」の世界を端的に現す言葉であるようだ。

紹介されるビジョナリーは、例えば、グーグルのCEOのエリック・シュミットや副社長のマリッサ・メイヤーからアップルのスティーブ・ジョブス、DEC社のコンピュータ設計者で、初期コンピュータ産業の育ての親ともいわれるゴードン・ベルなどなど多士済々であり、またその言葉も多種多様である。

その言葉群には、直接、本書にあたって参照していただきたいが、切れ味が良くて、「ふむ」と立ち止まって、考えさせられる言葉ばかりであることには間違いない。

確かに、こうした切れ味のいい言葉に日常的に接して思考を続けていれば、かすみがちな私の目も「時代の変わり目」をうっすらとでもわかるようになるかもしれないなー、と誇大妄想気味に考えてしまうのである。


多くの言葉を引用すると、営業妨害になってしまうので、最後にスタンフォード大学の卒業生向け講演でのスティーブ・ジョブスの元気の出る言葉を引用して〆とする


君たちの時間は限られている。
その時間を、他の誰かの人生を生きることで無駄遣いしてはいけない。
ドグマにとらわれてはいけない。
それでは他人の思考の結果とともに生きることになる。
他人の意見の雑音で、自分の内なる声を掻き消してはいけない。
最も重要なことは、君たちの心や直感に従う勇気を持つことだ。
心や直感は、君たちが本当になりたいものが何かを、もうとうの昔に知っているものだ。
だからそれ以外のことは全て二の次でいい。

=スティーブン・ジョブス=



ゆっくり時間をかけて読んでも、けして損をした気にはならない一冊である。

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