こうした新しいビジネスモデルを紹介する場合は、アメリカの最新モデルが紹介されることが多くて、なにか遠い世界で起こっている出来事のような印象を受けるケースが多いのだが、本書は、どちらかといえば、日本の新たなビジネスモデルの胎動の紹介に多くのページが割かれていることを評価したい。
取り上げられているのは、ミクシィ、ビジネス寄り、文系寄りのソーシャルニュースコミュニティや日本の新しい検索エンジン開発の動きなど、ネットの世界の住人の方々には、既によく知っている事例も入っているのだが、こうした新書として、広く一般の人々をターゲットとして書かれているものとしては、やむを得まい。
また、若干、時期がずれるせいか、YouTubeは取り上げられているが、「ニコニコ」は出ていないといった、ちょこちょことした不満はあるのだが、ネットビジネスのトレンドを大きく捉えるという目的で読むとすれば、十分目的を達することのできる一冊である。
このうち、気になる言葉などを少し。
それは、楽天のビジネスの話をとりあげている「変化」という章で、faddict.net blogというブログの引用あおしながら語られる「Web2.0」は「地主制度2.0」ではないかという主張だ。
少し引用すると
「利益率は低そうなのに、やらなきゃ乗り遅れるWeb2.0のジリ貧競争に巻き込まれ、同業他社と不毛なサービス合戦をしてボロボロになりながらも、得られるものは5%アフィ程度、どちらが勝とうが結局サービスを提供するGoogle様はしっかり儲かる。まさに氏の死の武器商人に踊らされる紛争地帯、それがWeb2.0なんじゃないだろうか。
で思うに、マッシュアップやらなんやらというのは、Google様やAmazon様という大地主によって与えられた土地で、小作人として生きる道のことを、なんかキレイに着飾ってごまかしているのにすぎないのではないか
とか
Web2.0というパラダイムのもとでグーグルやアップル、アマゾンなどが垂直統合モデルを再び復活させようとしていて、それはかなりの部分まで成功を収めている。
というあたり。
つまり、自由でフロンティア的なビジネス・フィールドに見えるネット・ビジネスの世界が、実は、その生産や富を生み出す基盤は既にグーグルやアップル、アマゾンなどの欧米先進企業群に押さえられていて、後発あるいはプラットフォーム化のチャンスをつかみ損ねた「企業」(これには「国家」も含まれるのだろう)は、彼らの提供するプラットフォームの中で、年貢を納めながら、生計を立てるしかなく、彼らの機嫌を損ねぬよう経済活動をしていくしかないということを意味している、ということなのだろうか。
そうだとすると、プラットフォーム化のチャンスをつかみ損ねた「日本」という国家の国民としては、「またアメリカが金メダルかよ」といった具合で、なんとも情けなくなってしまうのである。
この支配を打破する方法として、本書の最後の方に
<リスペクトーアテンションープロフィット>
という導線をうまく描き出せるかどうかが、今後のアテンションエコノミーにおける収益モデルのカギになるのではないかと思うのである。
そして、こうしたモデルを確立することができれば、そのときにはグーグルやアマゾン、アップル・コンピュータが支配する「地主制度2.0」を打破し、プラットフォーム支配をはねのけて、新たなエコノミーをつくり出すことができるようになるかもしれないのだ。
そのモデルをつくり出すのは、これからのインターネットベンチャーの役目である。
となにやら、道のりは遠そうだが、けして不可能ではない方法が掲げられている。
きっと、日本の若きインターネットベンチャーたちへの「がんばれよ」の言葉なのだろう。
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