2012年5月26日土曜日

本田直之「ノマドライフ」

最近ノマドのオピニオンリーダーともいえる安藤美冬さんの登場が増えたなと思ったら、賛否両論、個人的には結構喧々囂々となっているように思える「ノマド」論争なのだが、ノマドっていうのは喫茶店やファーストフード店を電源を探してうろうろと彷徨うことではなくで「暮らし方」「ライフスタイル」なのだよ、と主張しているのが本書。
ノマドは最近流行の言葉といってよく、いつぞやNHKのニュースで取り上げたことがあって、少し驚いたのだが、PCを抱えてオフィス以外のところで仕事をするっていうのが際立っていて、そこの根底にある、一定の組織に永続的に所属しない自由さと不安定さの側面が隠れがちであるように思える。

そのあたり、本書は、ノマドの持つ精神性に着目して語られているようで、ノマドというライフスタイルが、組織に所属するサラリーマンやフリーランスという勤務の在り様ではなく、組織というものとの所属関係や立ち位置、自分が生きていくうえでの精神的な拠り所をどこ置くか、ということ抜きでは語れないということをわれわれに示してくれている。

個人的に肝だと思っているのは、ノマドというライフスタイルで重要なのは「捨てる事」「減らすこと」であり、どこまで身軽になれるかっていうことではないだろうか
こう書くと、すんでいる住居や部屋を持たず、トラベルバックを引いて、ホテルや友人宅を泊まり歩くことか、ってな感じでショートカットしてしまう人がいるので要注意。けして、そんなことではなく、毎日の生活やビジネスの中で実績はきちんとしながら、いかに古びてしまったものを捨て、新しいものを取り入れていくか、しかも、溜め込むではなくいかに身軽に、軽やかに動ける形に自らを仕上げていけるか、ということなのだろうか。

本書の構成は

Chapter1 なぜ、ノマドライフなのか
Chapter2 ノマドライフの実践 ワークとテクノロジー
Chapter3 ノマドライフの実践 お金と生活
Chapter4 ノマドライフの実践 思考のトレーニング


となっていて、極く私的に記録しておきたいのは「仕事のトレーニング」のところ。

そこではノマドライフを実現するために

①週1回「会社に行かない日」をつくる
②机の引き出しを空にする
③デスクトップPCはいらない
④ガラケーをやめる

が肝要であるとのこと。
こちらも賛否両論あるとは思うが、個人的には①と②のあたりは「定住」「定着」というある意味居心地のよい環境から離れるために特に心がけてもいいかと思う。


筆者の言によればノマドライフは「誰にでもできるか、すぐにはできない」ものなのだが、「ノマドライフを続けていると、ライフスタイルがコンテンツになる」だそうだから、ノマドという言葉に興味を抱く人は倣ってみてはいかがか。

とはいっても、会社に縛られ、自由度が失われないようにするため、『提案したいのが、あえて昇進を受けない「ポジティブ・ディモーション」』(P26)といったように、サラリーマンではなかなか思い切れない、毒もあちこちに含まれていて、ノマドライフってのもなかなかに手ごわい。

通常の人は、こうしたライフスタイルに憧れたりしながら、定住・定職生活を続けているのが現状だろうし、流行だからと皆がこうした暮らし一辺倒に染まるってのも、ちょっと画一的で怖い気がするのだが、「定住」「定着」の生活、ときおり(人によっては度々)閉塞感を感じるのは事実。そこに風をいれるために、こうしたライフスタイル無理せず取り込むのがいいのかも。

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