2013年2月10日日曜日

佐藤 優「読書の技法」(東洋経済新報社)

評判と評価の程はいろいろあろうが、インテリジェンスと外交問題では識見の高い筆者の読書論。
もともと外務省時代から、その知識量や情報量にかけては外務省きっての人物であった人の読書論、いや読書論にとまらず情報の処理論と知識の集め方、身のつけ方の処方というべきなのが本書。

構成は
第Ⅰ部 本はどう読むか
 第1章 多読の技法ー筆者はいかにして大量の本を読みこなすようになったか
 第2章 熟読の技法ー基本書をどう読みこなすか
 第3章 速読の技法ー「超速読」と「普通の速読」
 第4章 読書ノートの作り方ー記憶を定着させる抜書きとコメント
第Ⅱ部 何を読めばいいか
 第5章 教科書と学習参考書を使いこなすー知識の欠損部分をどう見つけ、補うか
  【世界史】
  【日本史】
  【政治】
  【経済】
  【国語】
  【数学
 第6章 小説や漫画の読み方
第Ⅲ部 本はいつ、どこで読むか

となっていて分量的には第Ⅱ部もかなりあるのだが、個人的にも読者的にも、やはり興味を引くのは第Ⅰ部の読書の手法の様々だろう。

といって、多くの速読法といった読書技術を競うものではなくて、それぞれの分野の基本をどう熟読するか、どうエッセンスを抽出するか、といった技法が愚直な在り様で教示されているのは、表現者として誠実といっていい。とりわけ、「すでに十分な知識のある分野」でないと速読しても得られる成果はほとんどない、といったあたり、技術一辺倒の速読術への痛烈な批判といっていい。

まあ何はともあれ、本書で語られるのは、知的生産を行ううえで必須である「読書」を通して、知識の集積をどうするか、について「熟読」「超速読」「速読」というステージごとに論じられる手法は、これから知的生産と表現活動を志す人たちにとって参考となることは請け合いである。しかもその手法が、有体にいえば「要点を掴むよう読み、まとめ、ノートに記す」という手間のかかるもであるが故に信頼してもいいのでは、と思う次第なのである。

手法そのものをあれこれ紹介するのは、こうした読書論・技法の書籍のレビューとしては反則行為であるから詳述はしないが、読書手法のノウハウを知るという目的だけでも一読しておいた方がよいと思う一冊である。
(本書で紹介されているテクニックはた別の機会に・・・)

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