2012年4月22日日曜日

秋梨惟蕎「もろこし紅游録」(創元推理文庫)

銀牌侠」の活躍を描いた、中華風味豊かなミステリー「もろこし銀侠伝」の第2作。

収録は
「子不語」
「殷帝之宝剣」
「鉄鞭一閃」
「風刃水撃」
の4作

いつものようにレビューをすると

「子不語」の舞台は春秋戦国。まあ、この銀牌侠の話の始めの始めのほうといっていい。事件は斉の国の首都でおきる複数の殺人事件。それも下着姿の男が、顔を切り刻まれて殺されている。得物と思われる短矛は離れて場所に転がっていて、という複数の事件の犯人探し。この話で「銀牌」の話で、あちこちでキーのように語られる「勢(システム)」の話の発端がここででてくる。

「殷帝之宝剣」は明の三代目、永楽帝の時代が舞台。山中の道観で起きた、武術の達人の謀殺事件の話。殷帝之宝剣というのは、殷時代の皇帝が持っていたこれがあれば大軍も撃退できるという剣なのだが、この剣を謀殺された破剣道人を持っていたとかいないとか・・。事件の真相は「人間不信」の現れといったところなのだが、この話でもでてくる「明」の時代の創建当時の皇帝というのは、なんとも陰鬱。明という国家にはそんなに変な印象をもっていなかったんだが、ちょっとマイナス方向に変わった感じ。

「鉄鞭一閃」の舞台は清の乾隆年間。蘇州の饅頭屋の主人が、首のない状態で殺されているのが発見される。この主人、饅頭をつくるのは巧いが人に恨まれるような人物ではない。さて・・・。ということで行きずりの鉄鞭の達人、呼延雲こと幻陽先生が、殺された主人の息子、小八を助けて、犯人探しと敵討ちをする話。

「風刃水撃」は、さらに時代が下がって太平天国の乱の後、中国が列強に蚕食されながらも革命を起こした中華民国の初期の江仙という都市。ここで起きた妙な風水師たちが起こす妙な占いと、それに起因した殺人事件。しかし、そこに隠されているのは、列強の支配から脱するための革命の動きと世俗の商いの動きがもたらしたものは、ってなところ。といいながら、この中編で話を明るく軽やかにしているのと、話のキーは「甜々」という女の子。彼女の活躍と意外な正体が最後の絶妙な味付けか。


まあ、なにはともあれ銀牌侠の活躍は後生へとつなげられることになる、民国から日本政府支配、そして共産党政府へとつながる中で銀牌侠の活躍はどうなるのか、まあ、そこも気になるのだが、過去の歴史の中での銀牌侠の活躍もまた読みたいものであるのだが、さて、3作、4作目はいかに。

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