「不機嫌な職場」の続編ともいえるのが本書。
前著では、バブル崩壊後、業績主義が進行する中で、顕在化してきた、カサカサして、協力しあえない、それどころか対立関係すら生んでしまっている「職場」の問題点を分析し、その解決に取り組んでいる職場や会社の実例を紹介しながら対策を記述していたのだが、本書はそれを一歩進めて、「不機嫌な職場」の経営学的な分析と対処法を体系的に論じたものといえる。
構成は
第1章 組織にも感情がある
第2章 そもそも感情って、何?
1 なぜ、感情が生まれるのか
2 感情をどうコントロールするか
3 感情は連鎖する
第3章 組織感情をマネジメントする
1 組織における感情の位置づけ
2 マネジメントの方法
第4章 組織感情を引き出し、共有する方法
1 イキイキ感情を共有したい
2 あたたか感情を共有したい
3 ギスギス感情を変えたい
4 冷え冷え感情を変えたい
第5章 良い職場、良い会社をつくろう
となっていて、今までは「モチベーション(やる気)」という側面でしか語られたり、対策が練られていなかった、組織感情について、正面から取り上げ、その組織感情が、組織のパフォーマンスに与える影響や、そのコントロール方法について論述しているのは他のモチベーションを語るビジネス本にない特徴。
その対処法などが、景気や業界環境といった外部環境と切り離された、純粋化された形で語られている点に、ちょっと不満を持たないではないのだが、意欲を
どうかきたてるか、職場をどう燃やすか、といったあっけらかんとしたモチベーション論や業務改革を語る他のビジネス本とは一線を画している。
特に日本型の通常の組織の場合は、よくある「業務改革本」のようなやり方では、なんとなく上滑りしてしまったり、やらされ感や、またかといった感情が先
立って、職場を活気付けるどころか、そうした活動自体が職場に徒労感を与える場合が多いと思っているので、本書の「感情」を基礎にすえた職場活性化策は、
様々な面で参考にしていい。
最後に、オルフェウス室内管弦楽団(アメリカ ニューヨーク州)のエピソードを紹介してこのレビューの〆としよう。
このオーケストラは、演奏活動
を続けている管弦楽団らしいのだが、その8つのモットーが
①
その仕事をしている人に権限を持たせる
②自己責任を負わせる
③役割を明確にする
④リーダーシップを固定させない
⑤平等な
チームワークを育てる
⑥話の聞き方を学び、話し方を学ぶ
⑦コンセンサスを形成する
⑧職務へのひたむきな献身
ということだそうだ。(詳しくは本書で)
新書らしく、さらっと書いてあるので、理論的なところはちょっと物足りないかもしれないが、ありきたりの「業務改革本」に飽きてきたら一読を薦めたい一冊
と思う。
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